[PR]

決算担当者向け 電子申告義務化に向けた留意事項 〜EDINETのデータを活用した財務諸表の電子申告に関する実務対応ポイント <上>〜

Ⅱ 添付書類(財務諸表と勘定科目内訳明細書)の電子申告の概要

財務諸表と勘定科目内訳明細書については,従来から電子データによる提出が可能となっていますが,法人税申告書別表と比較すると電子申告の実践割合は低いのが現状です*1

この要因として,財務諸表についてはXBRL形式,勘定科目内訳明細書についてはXML形式での提出が求められていることが挙げられており,今回国税庁では「電子申告義務化に伴い導入する利便性向上施策」として「財務諸表のデータ形式の柔軟化(CSV形式)」と「勘定科目内訳明細書のデータ形式の柔軟化(CSV形式)」を公表しました。

この施策により財務諸表と勘定科目内訳明細書については,CSV形式で電子データの提出が可能となっています。

なお,今回「電子申告義務化に伴い導入する利便性向上施策」としてCSV形式による提出が可能となりましたが,従来のXBRL形式(財務諸表),XML形式(勘定科目内訳明細書)での提出も引き続き可能となっています。

以上のことから,本連載第2回目となる今回は,添付書類(財務諸表と勘定科目内訳明細書)の電子申告の概要として,勘定科目内訳明細書については「預貯金等の内訳書」を例に,財務諸表については「貸借対照表」を例に,電子申告にあたり整備が必要となる国税庁の標準フォームの具体的な作成要領について説明します。

*1 令和元年8月開催「TKC電子申告セミナー2019」のアンケート結果(参加者1,000名)
 『現在電子申告を実践している帳票についてお聞かせください』(複数回答可)

  • 法人税:59.6%,地方税:59.7%,消費税:67.6%
  • 財務諸表:3.7%,勘定科目内訳明細書:3.9%
  • 会社事業概況書(法人事業概況説明書):19.7%

1.勘定科目内訳明細書のCSVデータの作成要領

勘定科目内訳明細書のCSV形式による提出については,国税庁HPに「CSV形式データ作成に当たっての共通留意事項」,「標準フォーム」が掲載されています*2

HP上で1つ1つの勘定科目内訳明細書について,「標準フォーム(Excel形式)」や「留意事項等」が掲載されており,こちらに記載の通りにデータを作成することになります。
ここでは「預貯金等の内訳書」を例に具体的な作成手順を確認します。

*2 「CSV形式データ作成に当たっての共通留意事項」,「標準フォーム」
http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho2.htm

【図表1】CSV形式によるデータ作成の例示(標準フォームを使用した場合)

CSV形式によるデータ作成の例示(標準フォームを使用した場合)

(出典)令和元年8月開催「TKC電子申告セミナー2019」国税庁講演資料より抜粋(編者改)

図表1について以下に詳しく説明します。

①法人で作成しているデータを,留意事項に沿うようデータを加工
前述(注*1)の「TKC電子申告セミナー2019」のアンケート結果では,62.4%の参加者が会計システムや業務システム等から出力されたデータを加工して勘定科目内訳明細書を作成していると回答しており,多くの大企業ではスプレッドシートで勘定科目内訳明細書を作成しているものと想定されます。現在作成しているデータを,今回の国税庁指定の標準フォームに合わせるようデータを加工することが第一ステップの業務になります。 具体的に「預貯金等の内訳書」では,金融機関名や支店名は「全角」,口座番号や期末現在高は「半角」等の入力文字基準が定義されていますので,この留意事項に合わせてデータを加工する必要があります。

②加工したデータを標準フォームに貼付け
加工したデータを,国税庁指定の標準フォームの該当箇所に貼付けます。「銀行名」の列には金融機関名のデータ等,標準フォームで指定している列に正しく所定のデータを貼付ける必要があります。

③フォーマット区分,行区分を,セルに表示される例示に基づき入力
国税庁指定の標準フォームには,一般的には企業側で管理していない項目が存在します。「フォーマット区分」,「行区分」等がこれに該当し,それぞれ留意事項に記載の内容を標準フォームに入力する必要があります。
「フォーマット区分」は預貯金の内訳書では「1」,受取手形の内訳書では「2」と定義されており,定義通りの数値を入力する必要があります。
「行区分」は明細行(当該勘定科目内訳明細書の明細部分)の場合は「0」を,合計行(当該勘定科目内訳明細書の合計部分)の場合は「1」を入力する等のルールに基づきデータを整備します。

④枠内のタイトル行を削除し,貼付け等を行ったデータのみとなったことを確認
国税庁指定の標準フォームにはあらかじめタイトル行がありますので,データが整備できた段階でタイトル行を削除します。

⑤ファイル名を設定
「CSV形式データ作成に当たっての共通留意事項」の中で,ファイル名については次の記載があります。

1 ファイル名の命名規則(原則)
ファイル名については,以下の形式で記録してください。

「様式ID_バージョン.csv」

【注意】ファイル名に誤りがある場合,作成されたファイルが何の書式データであるか判別が付かず,送信ができませんのでご注意ください。

各勘定科目内訳明細書の様式IDとバージョンを確認した上で,ファイル名を設定します。設定すべきファイル名は,預貯金の内訳書では「HOI010_4.0.csv」,受取手形の内訳書では「HOI020_3.0.csv」等国税庁HPに記載がありますので,ご確認ください。

⑥作成したExcelデータのファイルの種類を「CSV(カンマ区切り)(*.csv)」とし,CSV形式データを作成

⑦保存をして終了
なお,国税庁では作成したCSVファイルを国税庁が公開しているレコードの内容及び留意事項に沿っているかどうか確認することができる「CSVファイルチェックコーナー」をHP上に用意しています。こちらのチェック機能の活用もご検討ください(図表2参照)。

【図表2】作成したCSVファイルのチェック(チェックツールの活用)

作成したCSVファイルのチェック(チェックツールの活用)

(出典)令和元年8月開催「TKC電子申告セミナー2019」国税庁講演資料より抜粋(編者改)

2.財務諸表のCSVデータの作成要領

財務諸表のCSV形式による提出についても,国税庁HPに「CSV形式データ作成に当たっての留意事項」,「勘定科目コード表及び標準フォーム」が掲載されています*3

令和元年9月時点では,貸借対照表と損益計算書については「勘定科目コード及び標準フォーム」が掲載されていますが,株主資本等変動計算書等その他の財務諸表については「令和1年内に掲載予定」となっており,かつ暫定版として情報提供されていることにご留意ください。勘定科目コード表及び標準フォームの確定版は「令和2年2月下旬に公開することを予定している」とされています。

暫定版ではありますが,財務諸表のうち貸借対照表と損益計算書についてはEDINETの23業種6,400の勘定科目に対応した標準フォームが公開されています。今回の財務諸表の電子申告にあたり,上場企業では有価証券報告書をEDINETで提出していることに鑑み,e-Taxで利用できる勘定科目数を有価証券報告書に合わせることで,EDINETで利用している勘定科目をそのまま利用可能とする環境整備を図っています。EDINETの勘定科目に関連付けした国税庁独自の「勘定科目コード」を公表しており,EDINETとの関係性に留意する必要が出てきています。

国税庁HPで公開されている「⑤ 標準フォーム及び勘定科目コードに係る具体的な作成のイメージ」の「・ハ CSV形式データのレコードの内容等(PDF形式:303KB)」では,次の記載があります。

「・ハ CSV形式データのレコードの内容等(PDF形式:303KB)」
(参考2)勘定科目コードの区分等
令和2年4月よりe-Taxで財務諸表をCSV形式データにより送信する場合に使用する「勘定科目コード」は,財務諸表種類ごとに次のように区分し,作成しています。

1 貸借対照表及び損益計算書
企業開示において標準的に使用されている約6,400の勘定科目(注)を,業種番号(2桁)及び区分番号(3桁)に区分し,4桁の整数と組み合わせた計9桁の英数字で作成しています。

(注)金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示に関する電子開示システム(EDINET)で使用可能な勘定科目で,2019年版に対応しています。

(例)勘定科目コード「10A100020」(現金及び預金/一般商工業)の場合
「10」一般商工業(業種番号),「A10」流動資産(区分番号),「0020」現金及び預金(整数4桁)

ここでは「貸借対照表」を例に具体的な作成手順を確認します。

なお,勘定科目内訳明細書に引き続き,前述(注*1)の「TKC電子申告セミナー2019」のアンケート結果では,72.1%の参加者が会計システムから出力されたデータを加工する等スプレッドシートで申告書に添付する財務諸表を作成していると回答しており,多くの大法人ではスプレッドシートで申告書に添付する財務諸表を作成しているものと想定されます。そのため,本稿では今まで作成しているスプレッドシートのデータをベースに国税庁の標準フォームを作成する手順をご案内します。

これ以外にも国税庁の標準フォームをベースにCSVデータを作成する方法もありますが,こちらについては前述の勘定科目内訳明細書の手順を参考にしてください。

*3「CSV形式データ作成に当たっての留意事項」,「勘定科目コード表及び標準フォーム」
http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho3.htm

【図表3】勘定科目コードを設定し,CSV形式データを作成する方法

勘定科目コードを設定し,CSV形式データを作成する方法

(出典)令和元年8月開催「TKC電子申告セミナー2019」国税庁講演資料より抜粋(編者改)

図表3について以下に詳しく説明します。

①勘定科目コードの設定
まず初めに現在作成している財務諸表のスプレッドシートの勘定科目に国税庁指定の勘定科目コードを設定します。前述の通り国税庁はEDINETの科目体系に国税庁独自の勘定科目コードを付番しています。勘定科目コード表から該当する勘定科目を検索して,例えば流動資産は「10A100010」,現金及び預金は「10A100020」というように定義された国税庁独自の勘定科目コードをスプレッドシートに追加します。

②勘定科目コードがない場合
EDINETでも標準科目に存在しない勘定科目を追加科目として追加できますが,電子申告における財務諸表のデータでも標準科目に存在しない勘定科目は任意科目として追加できます。追加したい科目の属性に近い標準科目に枝番として勘定科目を追加することができます。

③「行区分」,「階層番号」の設定
勘定科目内訳明細書と同様,国税庁指定の標準フォームには一般的には企業側で管理していない項目が存在します。
「行区分」,「階層番号」等がこれに該当し,それぞれ留意事項に記載の内容を標準フォームに入力する必要があります。
例えば「行区分」には,勘定科目コードが「タイトル項目」の場合は「T」を,貸借対照表等内の勘定科目で金額(数値)を記録する「金額型」の場合は「1」を,個別注記表等内の勘定科目等で注記事項等の文字を記録する「金額型以外」の場合は「2」を,半角文字で記録願います,とされています。

④基本情報の設定
「1行目」から「5行目」に法人の基本情報を設定することとされています。
1つのCSVファイルに対して,1~4行目は半角文字で「A→B→C1→C2」の順に記録し,5行目には全角文字で「財務諸表名」を記録願います,とされています。
1行目の「A」にはその内容として財務諸表種別を記載することとされており,貸借対照表は「BS」,損益計算書は「PL」,株主資本等変動計算書は「SS」とする等記載内容が定義されています。
また,2行目の「B」にはその内容として法人名を全角文字で50文字以内で記録願います,とされています。
3行目,4行目は事業年度(自)と事業年度(至)の項目で,表示形式を「文字列」に設定し,半角文字でYYYY-MM-DDで記録願います,とされています。
(例)「2020年4月1日→2020-04-01」

⑤財務諸表データの修正 「カンマ」の削除等の入力文字基準に沿うように変更(セルの書式設定を「標準」に設定)します。

⑥CSV形式データの作成 ここからは勘定科目内訳明細書の手順と同様です。ファイル名が指定されていることにもご留意ください。

ファイル名を設定

作成したExcelデータのファイルの種類を「CSV(カンマ区切り)(*.csv)」とし,
CSV形式データを作成

保存をして終了

なお,既にご案内したとおり,国税庁のe-TAXホームページでは勘定科目内訳明細書については「CSVファイルチェックコーナー」を用意しており,作成したCSV形式データが国税庁が公開しているレコードの内容及び留意事項に沿っているかどうかを確認することができます。

財務諸表についても同様に,作成されたCSVファイルのエラーの有無がチェックできるコーナーを,令和2年3月にe-Taxホームページに掲載する予定となっています。

[PR] 制作:税務研究会企画広告チーム
©2019 Zeimukenkyukai Corp.