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決算担当者向け 電子申告義務化に向けた留意事項 〜EDINETのデータを活用した財務諸表の電子申告に関する実務対応ポイント <上>〜

Ⅲ 財務諸表を中心とした添付書類の電子申告データ作成の実務対応ポイント

本誌No.3429(10/21号)で電子申告義務化の概要についてご紹介し,2020年4月1日以後開始する事業年度から資本金1億円超の大法人には電子申告が義務化されること,また対象書類は申告書別表だけでなく財務諸表と勘定科目内訳明細書等の添付書類も含まれ,財務諸表についても電子申告が必要となること,さらに電子申告義務化対象法人が義務化開始事業年度以降に書面により申告書を提出した場合は無申告扱いになること,等を説明しました。

また,続くNo.3430(10/28号)では添付書類である財務諸表と勘定科目内訳明細書の電子データの作成方法を,現在国税庁から公表されている内容に基づきご紹介しました。財務諸表のうち貸借対照表と損益計算書については,EDINETの23業種6,400の勘定科目に対応した標準フォームが公開されていることをご紹介し,e-Taxで利用できる勘定科目数を有価証券報告書に合わせることで,EDINETで利用している勘定科目をそのまま利用可能とする環境整備を図っている旨説明しました。第3回目となる今回は,財務諸表と勘定科目内訳明細書の電子申告データ作成にあたり実務上留意が必要となる事項についてご紹介することで,電子申告データ作成時にできるだけ手戻りが発生しないような業務体制の構築にお役立ていただければと考えています。

本稿では,(1)e-Taxにおける利用可能文字,(2)標準フォームで留意すべき項目,(3)財務諸表の任意の勘定科目の追加方法,の3点についてご案内し,最後にこの3点以外に決算開示担当者が留意すべき事項をまとめて説明します。

1.e-Taxにおける利用可能文字

(1)「利用可能文字一覧」について

電子申告では従前より利用可能な文字が定義されており,国税庁HPに「利用可能文字一覧」*1として以下の案内がなされています。

利用可能文字一覧(PDF形式:約9.8MB)
e-Taxで使用できない文字については,一覧では網掛け表示をしていますので,利用者の判断により,代替文字を選択していただくことになります。

下記の図表1は「利用可能文字一覧(PDF形式:約9.8MB)」の30頁で,前述のとおりe-Taxで利用できない文字については網掛け表示されており,電子申告データの中にe-Taxで利用できない文字が存在すると当該データはエラーとなり電子申告することができません。エラーの状態では当該データはe-Tax側で受理されず,送信されていない状態すなわち申告が完了したことにはなりませんので,留意が必要です。 そのため,電子申告データ作成にあたりすべての文字データをe-Taxで利用可能文字とする必要があり,この点が今回の財務諸表,勘定科目内訳明細書等の添付書類の電子申告に実務上大きな影響を与えると想定しています。

(2)具体的に留意が必要な「e-Taxで使用できない文字」

e-Taxでは,通常利用する文字については概ね利用可能となっていると判断していますが,「半角カナ文字」が利用できないことに留意する必要があります。以下「利用可能文字一覧」の30頁では「ア」「イ」等の半角カナ文字が網掛け表示されており,電子申告データの中に「半角カナ文字」がある場合,当該データはエラーとなり電子申告できません。そのため,国税庁HPの記載にあるように「利用者の判断により,代替文字を選択していただく」必要があり,「半角カナ文字」が存在する場合,「全角カナ文字」に置き換える(具体的には「ア」を「ア」に変換する)実務対応が必要になることが想定されます。特に勘定科目内訳明細書のデータには,「半角カナ文字」が存在する場合も想定されますので,実際に現在申告書に添付している書類について「半角カナ文字」が存在するか一度確認することをお勧めします。

*1 「利用可能文字一覧」
https://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/tetsuzuki7.htm

【図表1】利用可能文字一覧

利用可能文字一覧

(出典)国税庁e-Taxホームページ「利用可能文字一覧」30頁より抜粋

なお,今回の電子申告義務化にあたり,国税庁がHPで公開した「CSV形式データ作成に当たっての留意事項」*2にも以下の記載がありますので,あわせてご確認ください。。

(2)外字の取扱い

JIS第1水準及び第2水準以外の漢字,カナ,記号等(以下「外字等」といいます。)及び半角文字は,次のとおり取り扱ってください。
(中略)
ロ 半角文字のカナ,英数字,記号,丸付き数字,カッコ付き外字等は,JIS第1水準及び第2水準の全角文字に変換してください。

*2 「CSV形式データ作成に当たっての留意事項」
http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho3.htm

(3)EDINETでの「半角カナ文字」への対応状況

EDINET操作ガイドの「提出書類ファイル仕様書」*3に提出書類作成時に利用できる文字コードに関する説明があり,半角文字(英数字及び記号)については「JIS X 0201-1997及び半角片仮名を除く」で利用可能とされています。そのため,現在EDINETでもe-Taxと同様に「半角カナ文字」のデータは受付不可となっています。しかし決算開示システム側で「半角カナ文字」を受付可能な「全角カナ文字」に変換しているため,利用者が「半角カナ文字」は受付不可であると認識することなく実務対応がなされていると推察しています。そのため,決算開示システム側のインプットデータをそのまま前述の国税庁指定の標準フォームに貼り付けCSV形式データを作成すると,「半角カナ文字」がある場合にエラーとなる状況が発生することを懸念しています。EDINETのデータを活用して財務諸表の電子申告データを作成する際には,念のため勘定科目名に「半角カナ文字」が存在するか一度確認した方が良いと判断しています。

*3 「提出書類ファイル仕様書」「4-1文字コードセット」(80頁)参照
https://submit.edinet-fsa.go.jp/EKW0AZ0015.html

【図表2】半角文字の「カナ」について

半角文字の「カナ」について

(出所)株式会社TKCが作成

2.標準フォームで留意すべき項目

財務諸表と勘定科目内訳明細書の国税庁指定の標準フォームを確認する中で,各フォームの日付項目に留意が必要です。ここでは具体的に2つのフォームを例として取り上げて,留意事項をご案内します。

(1)財務諸表の「事業年度(自)と事業年度(至)の項目」

本誌No.3430(10/28号)では貸借対照表を例に財務諸表のCSVデータの作成要領について説明しましたが,その中の「基本情報の設定」として3行目,4行目は事業年度(自)と事業年度(至)の項目であり,表示形式を「文字列」に設定し半角文字でYYYY-MM-DDで記録する旨ご案内しました。

(例)「2020年4月1日→2020-04-01」

日付項目は固定長で,上記例の場合「0」を省略することはできません。

スプレッドシートでは日付項目としてYYYY/MM/DDの形式が採用されており,多くの企業で利用しているスプレッドシートで例えば「2020年4月1日」は「2020/4/1」としているのではと推察しています。このような場合,スプレッドシートのデータをそのまま電子申告データとして利用することはできず,一部加工が必要となることが想定されますので,留意が必要です。

(2)勘定科目内訳明細書の日付項目

現在,国税庁HPには「勘定科目内訳明細書(平成31年4月1日以後終了事業年度分)の標準フォーム等」として,次の16種類の勘定科目内訳明細書の標準フォームが掲載されています*4

*4 「勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)のCSV形式データの作成方法」
http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho2.htm

【図表3】勘定科目内訳明細書の標準フォーム等

勘定科目内訳明細書の標準フォーム等

(出典)国税庁e-Taxホームページより抜粋

このうち,受取手形の内訳書,有価証券の内訳書,固定資産(土地,土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書,支払手形の内訳書,買掛金(未払金・未払費用)の内訳書,源泉所得税預り金の内訳,土地の売上高等の内訳書,地代家賃等の内訳書,工業所有権等の使用料の内訳書には,日付項目(年月日,年月分)があります。

この勘定科目内訳明細書の日付項目は,「年」・「月」・「日」で別の領域となっていますので,留意が必要です。
一例として「受取手形の内訳書」の標準フォームを以下に掲載します。

【図表4】受取手形の内訳書の標準フォーム

受取手形の内訳書の標準フォーム

(出所)株式会社TKCが作成

3.財務諸表の任意の勘定科目の追加方法

国税庁が公表している「標準フォーム及び勘定科目コードに係る具体的な作成のイメージ」*5には以下の記載があります。

⑤ハ CSV形式データのレコードの内容等

項番5 【設定規則】
(2)記録した勘定科目のコードがコード表にない場合
法人において独自の勘定科目を使用されている場合などは,次のいずれかの対応によりコードの記録を行ってください。

①記録する勘定科目より上位に記録した勘定科目で,階層番号が小さい勘定科目のコードに枝番(「-(ハイフン)」+「整数」)を付して記録願います。

(例)流動資産の区分にコードがない場合「10A100010→10A100010-1」

このように,国税庁指定の勘定科目にない科目を使用する場合は,国税庁指定の勘定科目のコードに枝番を付して科目を追加します。EDINETでは任意の勘定科目を任意の階層に追加することが可能であるため,勘定科目の追加の考え方が異なる点に留意が必要です。具体的なイメージを次に示します。

【図表5】任意の勘定科目の追加について

任意の勘定科目の追加について

(出所)株式会社TKCが作成

標準科目として「科目A」の次に「科目B」が配列されている場合で説明します。

「科目A」と「科目B」の間に(同じ階層で)任意の「科目C」を追加したい場合,EDINETでは上記イメージのように「科目A」の次に「科目C」,「科目C」の次に「科目B」と任意の科目を同一階層上に追加することができます。一方,現在国税庁が公表している仕様では「科目C」は「科目A」の枝番か「科目B」の枝番(それ以外の勘定科目の枝番として設定することも可能です。)として追加することとなります。もしくは「科目A」と「科目B」の上位階層にある勘定科目の枝番として「科目C」を追加することで,「科目C」を「科目A」と「科目B」と同一の階層の科目として追加することも可能です。EDINETの仕様と国税庁の仕様では科目追加の考え方が異なりますので,EDINETのデータを活用して財務諸表の電子申告データを作成する際には,現在EDINETで標準科目に加え任意に追加している勘定科目を把握し,それらをどの勘定科目の枝番とするのか等の対応方法を検討する必要があると判断しています。

*5 「5 標準フォーム及び勘定科目コードに係る具体的な作成のイメージ」
http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho3.htm

4.その他決算開示担当者が留意すべき事項

(1)申告書に添付する財務諸表は円単位

申告書に添付する財務諸表は円単位となります。通常決算開示では,千円・百万円単位の金額であるため開示の金額単位よりも細かな単位のデータが必要となります。

EDINETのデータを活用して財務諸表の電子申告データを作成する際には,保持しているデータの金額単位を事前に確認することをお勧めします。

(2)申告書に添付する財務諸表は単体ベース

申告書に添付する財務諸表は単体ベースの財務諸表となります。連結納税を適用している場合も,連結親法人,連結子法人全社の単体ベースの財務諸表を添付することになります。

以上これまで3回にわたり,電子申告義務化に伴う財務諸表を中心とした電子申告データ作成についての留意事項と実務対応等についてご紹介しました。本解説が,決算開示担当者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。

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