2021/01/07 9:00
会社の議決権の分散を防止する方法はわかりましたが、そもそも議決権などの株主の権利は、どのようなものがあるのでしょうか?
わずかな株式数しか持たない株主であっても、株主である以上、様々な株主としての権利を有します。会社としては、株主から法律に認められた権利を主張された場合、それに対応をする必要があります。
1株でも株式を保有していれば認められる株主の権利を単独株主権、一定割合の株式数を保有する株主に認められる株主の権利を少数株主権といいます。具体的には次のとおりです。
(主な株主権)
保有株式数・議決件数の要件 | 保有期間 | 株主権の内容 |
単独株主権 | 要件なし | 剰余金配当請求権 |
残余財産分配請求権 | ||
株主総会における議決権 | ||
株主名簿、各種議事録、計算書類等の閲覧・謄写請求 | ||
募集株式の発行の差止請求 | ||
株主総会の決議取消しの訴え | ||
組織再編行為の差止請求 | ||
会社の組織に関する行為の無効の訴え | ||
6か月間の保有期間(公開会社のみ) | 取締役等の違法行為の差止請求 | |
株主代表訴訟の提起 | ||
総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権 | 6か月間の保有期間(公開会社のみ) | 株式総会における議案提案権 |
総株主の議決権の100分の3以上 | 6か月間の保有期間(公開会社のみ) | 株主総会の招集請求 |
総株主の議決権の100分の3以上または発行済株式の総数の100分の3以上 | 要件なし | 業務執行に関する検査役の選任請求 |
会計帳簿の閲覧・謄写の請求 | ||
総株主の議決権の100分の3以上または発行済株式の総数の100分の3以上 | 6か月間の保有期間(公開会社のみ) | 役員解任の訴えの提起の請求 |
総株主の議決権の100分の10以上または発行済株式の総数の100分の10以上 | 要件なし | 会社解散の訴えの提起 |
また、株主総会の議案について、決議に参加できる権利を議決権といいます。重要な議案ほど、より多くの議決権の一致が必要になります。各決議により決定できる事項は、次のとおりです。
決議の名称 | 決議要件 | 決議できる事項 |
普通決議 | 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の一致 | 取締役、監査役の選任 |
取締役の解任 | ||
剰余金の配当 | ||
利益相反取引の承認 | ||
特別決議 | 議決権を行使することができる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の一致 | 監査役の解任 |
譲渡制限株式の取得 | ||
特定株主からの自己株式の取得 | ||
定款変更 | ||
事業譲渡 | ||
合併契約等の承認 | ||
解散 | ||
特殊決議I | 議決権を行使することができる株主の半数(頭数)以上であり、当該株主の議決権の3分の2以上の一致 | 発行する全株式を譲渡制限株式にする決議等 |
特殊決議Ⅱ | 総株主の半数(頭数)以上であって、総株主の議決権の4分の3以上の一致 | 剰余金の配当、残余財産の分配、議決権について株主ごとに異なる取扱いを定める定款の変更 |
どんな小さな企業でも、最低1年に1回は定時株主総会を開催し、会社の業績等を報告する必要があり、その招集や運営も法律に則る必要があります。オーナー兼経営者が多い中小企業では、第三者に株式を持たれることが負担となることが多く、現状負担を感じていない場合でも、いずれは負担となる可能性があることは理解しておく必要があるでしょう。
本誌関連ページ
税理士先生が知っておきたい民事信託を活用した相続・事業承継 <第9回>事業承継における活用②~議決権分散防止・遺留分対策~
No.3631(令和2年11月23日号)30頁