口コミサイトへの書き込み

1 口コミサイトへの書き込み

 img_jitsumu_0050.jpg近年、口コミサイトが一般の消費者に広く利用されるようになり、企業にとっての影響も無視できないものとなっています。そのような口コミサイト利用に関して、従業員が何らかの不適切な書き込みを行っていることが判明した場合、企業としてどのように対応すべきかが問題となります。

 不適切な書き込みの種類としては、あえて低評価をつけるような書き込みを行うケースと、これとは逆に、過大評価をするケースが考えられます。

2 投稿者の特定

 まず前提として、書き込みは匿名により行われることが通常であることから、発信者を特定する必要があります。特定の方法としては、サイト運営者に対して、書き込みを行った者のIPアドレスやアクセスログの開示を求め、開示されたIPアドレス等からプロバイダを割り出し、プロバイダに対して発信者情報の開示を求めることになります。

 サイト運営者に対してIPアドレス等の開示を求める手段としては、①ウェブ上のフォームから行う方法、②プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った方法、③裁判手続を行う方法が考えられます。IPアドレス等のアクセスログの保有期間は3ヶ月から6ヶ月であることが多いので、書き込みを発見した場合には、早急に対応を行う必要があるでしょう。

 このようにして発信者が特定できた場合、不適切な投稿について、削除を求める、懲戒処分を行う、損害賠償請求を行う等といった対応を検討することになります。

3 投稿内容の削除の可否

 まず、投稿の削除を命じることができるかということが問題になりますが、投稿自体は私生活上の行動であり、プライベートに属するため、通常は投稿内容の削除を命じることはできません。ただし、労働者は私生活の領域といえども、企業秩序を害してはならないという義務を負っていると考えられるため、そのような義務に違反して、企業秩序を侵害するような内容の投稿を行っている場合には、企業秩序維持義務違反に該当するものとして、投稿内容の修正・削除を命じることも可能と考えるべきでしょう。

4 懲戒処分

 次に、懲戒処分の検討ですが、口コミサイトへの書き込みは、そもそも一個人の感想を書き込むものに過ぎず、中には信憑性の疑わしいものや、ひどい悪口を書いているものまで、種々雑多であるといえます。受け手の側も、口コミサイトへの書き込み内容はそのようなものであることを前提に閲覧していることが通常であると考えられます。個人の感想である以上、どのような低評価がなされていようと、それが名誉・信用を不当に害するものと断定することは難しい側面があるでしょう。もっとも、個人的感想の域を超えて、事実ではないことを書き込んで不当に会社の社会的評価を貶めているような場合 (例えば、「衛生管理が疑われるような異物が混入していた」等)には、悪質な名誉・信用侵害行為として、懲戒事由該当性を肯定することができると考えられます。

 口コミサイトへ自社製品・自社店舗に関するネガティブな意見を書き込む行為のほか、その逆で、露骨に評価を上げる書き込みを行うことが、誇大広告等とならないかということも問題となります。

 このような行為はサイトの規約に違反することもあり得ますが、そのことからただちに懲戒処分や損害賠償の対象となるわけではないと考えられます。個々人がサイトの利用規約に違反したとしても、それはあくまでサイト運営者と当該個人との間における問題であるため、そのことで企業秩序が侵害されたことになるとは限らないからです。

 もっとも、ことさらに虚偽を書き込み、不当に評価を上げようとしている場合であって、当該書き込みが従業員によるものであることが明らかとなってしまったような場合には、会社自体の信用性を失わせるものであるため、懲戒処分が検討されることもあり得るでしょう。その場合も、事案内容の悪質性のほか、ただちに書き込みを削除したか等といった反省の態度などの事情に照らして処分の可否・軽重を判断することになります。

5 景品表示法との関係

 なお、仮に企業が顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を従業員に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、会社の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題になります(「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」・平成23年10月28日消費者庁)。

 会社としては、そのようなことを行わないことは当然のことながら、仮にそのような疑いがかけられるだけでも、企業イメージや信用に影響し得るため、普段から従業員に対して口コミサイトへの投稿に関する教育指導を十分に行っておく必要があります。

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