性同一性障害と就労上の配慮

性同一性障害の人の服装や化粧、トイレや更衣室の使用方法等に関しては、様々な職場で課題として検討する状況にあるかと思われます。今般、仮処分申立ての事件ですが、性同一性障害者に対する就労拒否について、会社に賃金の仮払いを命じる大阪地方裁判所令和2年7月20日決定が出されました。

この会社はタクシー会社であり、当事者である労働者はタクシー乗務員としてこれまで勤務していました。同労働者は生物学的には男性ですが、性別に関する自己意識は女性であり、ホルモン治療等を受けていました。同労働者は女性の衣服を着て、化粧も施して乗車していましたが、乗客から性的な趣旨の苦情が寄せられたことも受けて、会社は、同労働者が化粧や女性の衣服着用をやめないのであれば乗車を認められないとし、就労を拒否しました。

裁判所は、性同一性障害者が性自認に従った外見を取ろうとすることは医学的にも認められた臨床的特徴であり、このような自然かつ当然の欲求を否定することはできず、価値観を押し付けるべきではないから、同労働者に対しても女性と同等に化粧を施すことを認めるべきとしました。

会社は、接客・サービス業であることから、乗客の受け取り方を考えると不快の念を抱かれるおそれが否定できないと主張していましたが、裁判所は、今日の社会において乗客の多くが性同一性障害に対して不寛容であるとは限らず、性の多様性について寛容な態度を企業として示したからといって売上が減少する等の経済的不利益を被るとも限らないとして会社の主張を排斥しました。

同労働者は手術までは行っていませんでしたが、医師の診断があったため、会社側が配慮すべきという結論になっています。これは地裁の決定段階ですので、必ずしもその他の案件でも同様の判断がなされるとは限りませんが、使用者としては、医師の診断書が提出された場合には配慮を尽くさなければ紛争リスクが増加するおそれがあることに十分に注意する必要があるでしょう。

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