第194回 個人版事業承継税制の創設 ~平成31年度税制改正により制度化~

■制度の内容
平成31年度税制改正により創設される見込みである「個人版事業承継税制」は、個人事業者の事業用資産に係る贈与税または相続税の納税猶予制度です。全体的には、法人版事業承継税制の内容に準じた納税猶予制度になっています。平成31年1月1日以後に贈与または相続等により取得する財産に係る贈与税または相続税について適用されます。
都道府県の確認を受けた承継計画に記載され、経営承継円滑化法の認定を受けた受贈者または相続人(以下、「認定受贈者」または「認定相続人」といいます)が平成31年1月1日から平成40年(2028年)12月31日までの間に、贈与または相続等により、特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、納付すべき贈与税または相続税額のうち、贈与または相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税または相続税の納税が猶予されます。
法人版事業承継税制は非上場株式等に係る納税を猶予する制度ですが、個人版事業承継税制は特定事業用資産について納税を猶予する制度です。
なお、猶予税額の計算方法については、法人版事業承継税制と同様です。

■承継計画の作成・提出
「承継計画」は、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画であって、平成31年4月1日から平成36年(2024年)3月31日までの間に都道府県に提出されたものをいいます。平成36年(2024年)3月31日が提出期限とされている点に留意が必要です。

■特定事業用資産とは
「特定事業用資産」とは、贈与者または被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地(400㎡までの部分に限る)、建物(床面積800㎡までの部分に限る)および建物以外の減価償却資産(固定資産税または営業用として自動車税もしくは軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限る)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されるものをいいます。

■猶予税額の免除が受けられるケース
猶予税額が免除となる事由についても、おおむね法人版事業承継税制の取扱いに準じた内容です。

1.全額免除の場合
(1) 認定受贈者または認定相続人が、その死亡の時まで、特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合(注)
(注)贈与税の納税猶予特例の適用を受けている場合に、贈与者が死亡したときは、特定事業用資産をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税を計算します。その際、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予の適用を受けることができます。

(2) 認定受贈者または認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合
(3) 認定受贈者または認定相続人について破産手続開始の決定があった場合
(4) 申告期限から5年経過後に、次の後継者へ特定事業用資産を贈与し、その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予特例の適用を受ける場合

2.一部免除の場合
(1) 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して譲渡する場合
(2) 民事再生計画の認可決定等があった場合
(3) 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一括譲渡または特定事業用資産に係る事業の廃止をするとき
(注)経営環境の変化を示す一定の要件は、法人版事業承継税制の特例に準じた要件とされる予定です。

■法人成りした場合の取扱い
認定相続人が、相続税の申告期限から5年経過後に特定事業用資産を現物出資し、会社を設立した場合、その認定相続人が新設した会社の株式等を保有していることその他一定の要件を満たすときは、納税猶予を継続するとされる見込みです。法人成りを行うことについて、この税制を適用したことがネックにならないように、一定の配慮がされます。

■小規模宅地特例との関係
相続税の納税猶予を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地特例の適用を受けることはできないとされる点に留意する必要があります。

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