第146回 平成27年度税制改正の中小法人にとっての影響 ~今回の改正はプラスかマイナスか?~

今月のキーワード ―2015年2月―
公認会計士 太田達也

■税率の引下げ


「平成27年度税制改正大綱」(以下、「大綱」といいます)に法人税率等の改正が盛り込まれました。法人税率を現行の25.5%から23.9%に引き下げ、外形標準課税の事業税率(所得割)の引下げも併せて行われ、法人の実効税率を引き下げることを内容としています。実効税率が引き下がる一方において、代替財源の確保の観点から、繰越欠損金の控除制限の拡充、受取配当等の益金不算入制度の見直し等が行われます。

中小法人にとって、今回の改正はプラスとなるのでしょうか。


■中小法人の税率


資本金が1億円以下の中小法人については軽減税率が適用され、年800万円以下の所得については現在15.0%が適用されています。この15.0%の軽減税率は租税特別措置法で規定されていますが、今回の大綱では、2年間適用期限を延長するとされています。

年800万円を超える所得について現在25.5%の税率が適用されていますが、平成27年度税制改正により23.9%とされる見込みです。所得が多く発生している中小法人にとっては、今回の改正の恩恵が一部生じることになります。一方、年所得が800万円以下の中小法人にとっては直接の恩恵は生じないことになります。


■繰越欠損金の控除限度額の引下げ


代替財源の確保の観点から、繰越欠損金の控除限度額の引下げが大綱に盛り込まれています。すなわち、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度について繰越欠損金の控除限度額を繰越控除前の所得金額の65%(現行は80%)とし、平成29年4月1日以後に開始する事業年度について繰越欠損金の控除限度額を繰越控除前の所得金額の50%とするものとされています。

ただし、中小法人については、繰越欠損金の控除限度額を現行の控除限度額(繰越控除前の所得金額の100%)を存置するものとされますので、今回の改正は何ら影響ありません。


■受取配当等の益金不算入制度の見直し


大綱によれば、受取配当等の益金不算入制度における改正後の「株式等の区分」およびその配当等の「益金不算入割合」について、次の表のとおり改正を行うものとされています。

益金不算入となる株式等の区分および益金不算入割合

改正前 改正後
区 分 益金不算入割合 区 分 益金不算入割合
完全子法人株式等(株式等保有割合100%) 100分の100 完全子法人株式等(株式等保有割合100%) 100分の100
関係法人株式等(株式等保有割合25%以上) 関連法人株式等(株式等保有割合3分の1超)
上記以外の株式等 100分の50 その他の株式等 100分の50
非支配目的株式等(株式等保有割合5%以下) 100分の20


改正後は、株式等保有割合が5%以下の資本関係の薄い株式等については、配当等の額の80%相当額が課税対象となることを意味しています。中小法人の場合、そのような株式等を保有しているケースは少ないでしょうし、保有していたとしても金額が少額である場合が多いでしょうから、この改正によるマイナスの影響はあまり生じないと思われます。

今回の税制改正の中小法人にとっての影響ですが、トータルでみると、所得の多い法人には税率の引下げによる恩恵が生じますが、年所得800万円以下の法人にはプラスの効果は生じません。一方、マイナスの影響も大部分のケースで生じないと思われます。

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