2021/02/10 13:00
緊急事態宣言が栃木県を除き3月7日まで延長されていますので、該当地区の事業所は引き続きテレワーク及び時間外労働の抑制に努めてください。さて、このような事態ではありますが、この4月からの高年齢者雇用安定法の改正は予定通りですので、今回はこの内容について取り上げたいと思います。
65歳以降の就業意欲の高まり
我が国では少子高齢化が急速に進行している一方、高齢者の方の就業意識は高まりを見せています。独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」(2019年)【速報値】における60歳~64歳の高齢者の方への調査結果によれば、65歳以降働く予定について、「採用してくれる職場があるなら、ぜひ働きたい」及び「すでに働くことが(ほぼ)決まっている(誘い・雇用契約がある)」と答えた方が合わせて約6割に達しています。
高年齢者雇用安定法の改正
上記のような背景の中、改正高年齢者雇用安定法が4月1日に施行されることになりました。改正内容は現状の「65歳までの雇用確保措置」に「70歳までの高年齢者就業確保措置」が加わることとなります。
現状 | 高年齢者雇用確保措置 | 65歳まで |
+
法改正(令和3年4月~) | 高年齢者就業確保措置* | 70歳まで |
*高年齢者就業確保措置とは以下のいずれかの措置を講ずること。但し努力義務。
①70歳までの定年引上げ |
②定年制の廃止 |
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む |
【創業支援等措置】④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 |
【創業支援等措置】⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入 A)事業主自ら実施する社会貢献事業 B)事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業 |
2グループに分けられる
今回の改正は、既存の制度の拡大と新制度の2グループに分けられると考えられます。前者(上記①~③、②は変更なし)は、主に現状の65歳定年、および65歳までの再雇用制度をそれぞれ70歳までに拡大した内容ですので、現状制度を延長した場合のシミュレーションで対応の可否や変更内容が想定できます。
一方、後者(【創業支援等措置】上記④、⑤)は新制度になりますので、事業主や会社担当者は制度内容の確認が必要です。
創業支援等措置
創業支援等措置は大まかにいえば「従来までの従業員ではなくなり、業務委託契約(フリーランス)として働く」仕組みのことです。業務委託契約ですから、これまでの会社の労働保険や社会保険の被保険者の対象にはなりませんし、業務委託の方法や報酬についての仕組みを新たに決めなければなりません。また⑤は④と同様に業務委託契約なのは同じですが、契約先が今の会社ではなく、「会社の事業主自身が実施している社会貢献事業」や「事業主が委託、出資(資金提供)等をする団体が行う社会貢献事業」と別になるということです。
これらの創業支援等措置の導入に際しては、
Ⅰ 計画を作成 → Ⅱ 過半数労働組合等の同意 → Ⅲ 計画の労働者への周知 |
が必要になります。なお、上記の他に制度導入時に「高年齢者の就業先となる団体との契約」が必要となり、制度導入後は、個々の高年齢者と業務委託契約や社会貢献活動に従事する契約を締結する必要があります。
注意事項
今回の改正は従来までの定年延長や再雇用(継続雇用)制度だけではなく、新しく創業支援措置という「業務委託契約(フリーランス)」の仕組みが採り入れられています。もし、会社が採り入れる高年齢者就業確保措置について「創業支援等措置のみ」だった場合、労働者や労働者代表は「今までとあまり変わりなく70歳まで働けるのだ!」と勘違いすることも想定されますので、労使協定締結時や制度実施に際して事業主や会社担当者は「わかりやすい丁寧な説明」を心掛けていただきたいと思います。
なお、70歳までの就業確保措置が努力義務になったことにより、再就職支援措置、多数離職届の対象者が下記のように拡大されています。
出典:厚生労働省ホームページ
「パンフレット(簡易版):高年齢者雇用安定法改正の概要」を一部編集
現行の対象
【対象①】解雇その他の事業主の都合により離職する45歳~65歳までの者
【対象②】平成24年改正の経過措置として、継続雇用制度の対象者について基準を設けることができ、当該基準に該当せずに離職する者
これからは少子高齢化がより一層進行しますので、今回の法改正をプラスの材料として活用するようご検討ください。