第183回 税効果会計基準の一部改正に係る留意点  ~繰延税金資産・繰延税金負債の表示に係る改正~

今月のキーワード ―2018年3月―
公認会計士 太田達也

■税効果会計基準の一部改正
企業会計基準委員会から、平成30年2月16日付で「税効果会計に係る会計基準」の一部改正が、公表されました。「繰延税金資産および繰延税金負債の表示に係る改正」と「注記事項の追加」から成ります。適用時期については、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するとされていますが、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度および事業年度の年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用することができるとされています。平成30年3月期の年度決算において早期適用できることになります。

■繰延税金資産・繰延税金負債の表示に係る改正
改正前の取扱いでは、繰延税金資産および繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産または投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債または固定負債として表示しなければならず、ただし特定の資産・負債に関連しない繰越欠損金等に係る繰延税金資産については、翌期に解消される見込みの一時差異等に係るものは流動資産として、それ以外の一時差異等に係るものは投資その他の資産として表示しなければならないとされていました。
改正後は、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示するとされています。国際財務報告基準および米国会計基準と同じ取扱いとするものです。
その論拠として、「繰延税金資産は換金性のある資産ではないことや、決算日後に税金を納付する我が国においては、1 年以内に解消される一時差異等について、1 年以内にキャッシュ・フローは生じないことを勘案すると、すべてを非流動区分に表示することにも一定の論拠があると考えられる。」と説明されています(税効果会計基準15項)。
なお、貸借対照表の表示については、同一納税主体ごとに、繰延税金資産と繰延税金負債を相殺して表示する点は、従来と同様です。

■前期の財務諸表の組替え
企業会計基準第24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」14 項の定めに従い、適用初年度においては、表示方法の変更として、比較情報の組替え(前期の財務諸表を新たな表示方法により組替え)が必要になる点に留意する必要があります。
有価証券報告書等の金融商品取引法上の財務諸表については、当期の財務諸表と併せて前期の財務諸表を比較情報として開示します。この比較情報である前期の財務諸表について、改正後の表示方法(一律固定区分)に組み替える必要があります。
ただし、会社法の計算書類は、当期の計算書類1期分しか開示しませんので、前期の組替えは不要です。

■注記事項の追加
注記事項として、①評価性引当額の内訳に関する情報と②税務上の繰越欠損金に関する情報が追加されました。ただし、会社計算規則の改正案をみると、繰延税金資産・繰延税金負債の表示に係る改正のみが提案されており、注記事項の追加は提案されていません。したがって、会社法の計算書類については、注記事項の追加は強制ではなく、任意となると考えられます。
なお、前期の財務諸表についても、改正後の注記を行うことが原則ですが、経過措置として、前期の財務諸表に改正後の新たな注記を記載しないこともできるとされています。

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