2015/03/01 15:19
今月のキーワード ―2015年3月―
公認会計士 太田達也
■法人住民税の均等割の税率区分の基準
法人住民税の均等割の税率区分の基準は、法人税法上の「資本金等の額」です。例えば、東京都の場合は、資本金等の額が1,000万円以下(かつ特別区内の従業者数が50人以下)の普通法人については70,000円の均等割が課されます。
■法人税法上の「資本金等の額」とは
法人税法上の資本金等の額とは、法人税法2条16号に定める「資本金等の額」であり、法人税法施行令8条が具体的な金額を定めています。株式の発行をしたときに払い込まれた金銭等の額は資本金等の額の増加になりますが、それ以外にも自己株式の処分をした場合にも増加します。
■平成27年度税制改正により、新たな規制が課せられる
平成27年度税制改正案によれば、法人住民税均等割の現行の税率区分の基準である資本金等の額が、資本金に資本準備金を加えた額を下回る場合、当該額を均等割の税率区分の基準とするものとされる見込みです。すなわち、法人税法上の資本金等の額が資本金および資本準備金の合計額を下回る場合には、資本金および資本準備金の合計額が均等割の税率区分の基準とされるという意味です。
この改正は、どのような法人に影響が生じるのでしょうか。資本金等の額が資本金および資本準備金の合計額を下回るということは、資本金等の額が減少するような取引を行っている法人に影響があるということになります。資本金等の額が減少する取引としては、自己株式の取得が代表的な取引として挙げられます。
上場企業等が市場取引により自己株式を取得する場合は、取得価額の全額について資本金等の額が減少するものと規定されています。一方、自己株式を取得するときに、資本金や資本準備金の額は減少しませんので、資本金等の額が資本金および資本準備金の合計額を下回るという状況が生じやすいことになります。
最近では、上場企業等の多くが市場取引により自己株式を取得していますので、この改正により法人住民税の均等割を増加させる影響に働くケースが多いということになります。
また、中小法人でも自己株式の取得をすることは少なくありませんが、みなし配当の額を除いた部分が資本金等の額の減少額になります。この改正が影響する可能性はあります。
■無償増減資があったときの取扱い
平成27年度税制改正により、法人住民税均等割の現行の税率区分の基準である資本金等の額に、無償増減資等の金額を加減算する措置を講ずるものとされる見込みです。従来、無償減資をしても、法人税法上の資本金等の額は変わらないため、法人住民税の均等割も変わらないとされていましたが、この改正により、無償減資した場合でも、法人住民税の均等割の負担が減少し得ることになります。
地方税法の改正案をみると、資本金等の額から、会社法446条に規定する剰余金(会社法447条または448条の規定により資本金の額または資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したもので総務省令で定めるものに限る)を同法452条の規定により総務省令で定める損失のてん補に充てた金額を減算する旨が規定されていますので(地方税法改正案23条1項4号の5)、資本金の額または資本準備金の額を減少により生じた「その他資本剰余金」による欠損てん補の場合に、法人住民税均等割の税率区分の基準である資本金等の額から減算できると考えられます。
欠損てん補のための無償減資により、財務内容の改善を図る場合に、法人住民税の均等割負担も減少し得ることになりますので、プラスの改正であると考えられます。