第207回 災害損失特別勘定の繰入れ

■災害損失に係る決算対応
 昨年は、台風、地震を始めとする自然災害が多く発生しました。これから多くの法人が迎える年度決算において、災害損失に対する対応をどのように行うかが問題となります。災害が甚大である場合は、修繕等が早期に完了しない場合が少なくありません。損失の発生した被災事業年度と実際に修繕費用等を支出する事業年度がずれてしまうという問題が生じやすいと考えられます。

 被災資産について修繕等を行う場合に、その修繕費用は修繕等を行った事業年度の損金の額に算入されるのが原則ですが、上記のような問題に配慮するために、被害を受けた資産に係る修繕費用等の金額を合理的に見積もることができ、被災事業年度に損金算入を認めても税務上問題のないケースにおいて、災害損失特別勘定の繰入れによる損金算入が認められます。すなわち、災害により被害を受けた棚卸資産および固定資産の修繕等のために要する費用で、災害のあった日から1年以内に支出すると見込まれるものとして適正に見積もることができるものについては、災害損失特別勘定に繰り入れて、被災事業年度の損金の額に算入することができるとされています。

 なお、保険金、損害賠償金、補助金等により補塡される金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額となります。また、被災資産について評価損を計上した場合には、その資産の修繕等に要する費用は、土砂の除去に要する費用など一定のものを除き災害損失特別勘定への繰入対象になりません。

 繰入れの対象になる費用等については、法人税基本通達12-2-7をご参照ください。

■災害損失特別勘定の処理
 税務上、災害があった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる一定の費用(修繕費用等)の見積額(被災事業年度の翌事業年度以後に支出すると見込まれるものに限る)を災害損失特別勘定として繰り入れた場合は、明細書(災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書)の添付を要件として、繰り入れた事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。

 税務上は、災害損失特別勘定を繰り入れておいて、実際に修繕費用等を支出した場合には、その修繕費用等に相当する金額を災害損失特別勘定の取崩により益金の額に算入します。また、災害のあった日から1年を経過する日の属する事業年度等(以下、「1年経過事業年度等」という)終了の日においては、原則として、災害損失特別勘定の金額(取崩未済残額)を益金の額に算入します。ただし、修繕等がやむを得ない事情により1年経過事業年度等終了の日までに完了しなかった場合には、延長確認申請の取扱いが別途置かれています。延長が認められた場合は、修繕等が完了すると見込まれる日の属する事業年度まで益金算入時期を繰り延べることが認められます。

■修繕費用等の見積りの方法
 修繕費用等の見積額は、修繕等を行うことが確実に見込まれる被災資産について、例えば次の金額によるなど合理的な方法で見積もることが必要となります(法基通12-2-8)。

① 建設業者、製造業者等による当該被災資産に係る修繕費用等の見積額
② 相当部分が損壊等をした当該被災資産につき、次のイからロを控除した金額
 イ 
再取得価額または国土交通省建築物着工統計の工事費予定額から算定した建築価額等を基礎として、その取得の時から被災事業年度終了の日まで償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額
 ロ 被災事業年度終了の日における価額

■税務処理のイメージ
 以下、税務処理のイメージを具体例により示します。

 災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる修繕費用等の見積額について、次のように災害損失特別勘定に繰り入れる経理を行い、災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書を添付します。

(災害のあった日の属する事業年度)
修繕費用等の見積額を災害損失特別勘定として繰り入れ、損金の額に算入します。
災害損失特別勘定繰入損  1,000 / 災害損失特別勘定 1,000
(注)確定決算における経理が「災害損失特別勘定繰入損」および「災害損失特別勘定」という勘定科目を使用していない場合(例えば特別損失または災害損失引当金繰入損等として処理していた場合)であっても、その内容が災害損失特別勘定であり、その損金算入に当たり、災害損失特別勘定に関する明細書が確定申告書に添付されているときは、これが認められます。また、災害損失特別勘定への繰入額が少額であり、企業会計上、特別損失として処理することが適当でないときは、企業会計上相当と認められる勘定科目で処理したとしても、明細書の添付があれば、税務上これが認められます。

(翌事業年度:修繕費用等を950支出し、完了した場合)
修繕費用等  950  / 現預金 950
災害損失特別勘定  950 / 災害損失特別勘定取崩額  950
また、取崩未済額を取り崩し、益金の額に算入します。
災害損失特別勘定   50 / 災害損失特別勘定取崩額  50
翌事業年度については、修繕費用等950が損金算入、災害損失特別勘定取崩額の合計1,000(950+50)が益金算入の対象となります。
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