「事前確定届出給与の問題点」|税務通信 READER'S CLUB

No.3586
(2020年1月20日号) 5頁

税務の動向「功績倍率法 最終報酬月額は定期同額給与を基礎に判定)」

Q1

 記事では、社会保険の節約等のために、月額の役員報酬を低く設定し、事前確定届出給与を支給する場合における功績倍率方式利用時の問題点が指摘されています。その他に考えられる問題点はないのでしょうか。

A1

 社会保険料には上限額があり、一定額以上を支給する場合には、負担額は上限額で固定されることになります。そこで、月給のうち大部分を賞与として支給することにより、社会保険料の負担を低減することが可能です。

 この記事では、役員退職給与の過大性を判定する際に利用される功績倍率方式において、社会保険料の節約等のために、月額の役員報酬を低く設定した場合の取扱いが解説されています。結論としては、功績倍率方式における最終報酬月額は、月額役員報酬と事前確定届出給与による支給額を合計した年額を12分の1にした額を利用するのではなく、あくまで月額のみの役員報酬額とする、という裁決例が紹介されています。この裁決後に裁判となった東京地裁平成29年10月13日でも、この論点が出されることはありませんでしたので、一定の結論が出たと言えると思います。規程を変更しておけば、年収ベースの役員報酬額を用いて計算できる、と解説した雑誌や書籍が存在しましたが、それらが間違った解説であることが証明されたことになります。

 また、社会保険料の節約のため、月額給与額を低く抑え、事前確定届出により賞与を多く支給する場合の問題点は、他にもあります。それは、賞与支給時期前に、受領予定者が死亡してしまうケースです。

 事前確定届出給与は、職務執行期間に対する報酬をいつ支給するかという定めなのであって、職務執行期間が経過したから支払うという性質のものではありません。また、賞与は、そもそも支給時期に在職している場合に限り支給されるものです。そのように考えれば、月額10万円の役員報酬、事前確定届出給与を2,000万円にしているケースで、その事前確定届出給与の支給日前に受領予定者が死亡してしまうと、その遺族は2,000万円を手に入れることができないと考えられます。

 やはり、特殊な処理をした場合には、思いもよらぬ落とし穴にはまる可能性があることを忘れてはいけません。


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