第220回 中小企業のM&Aを促進させるための特例税制の創設~令和3年度税制改正による措置~

■中小企業経営強化税制にD類型が新設
 令和3年度税制改正により、中小企業経営強化税制に新たな類型である経営資源集約化設備(D類型)が追加されることになりました。D類型の対象は、計画終了年度に修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画(経営資源集約化措置が記載されたものに限る)を実施するために必要不可欠な設備とされています。
 中小企業の生産性向上を実現させるためには、M&Aによって経営資源の集約化等(統合・再編等)を推し進める必要があると考えられ、中小企業の経営資源集約化等を推進するために税制上の特例措置が設けられたものです。
 なお、修正ROAおよび有形固定資産回転率の計算方法は、次の通りです。

ROA(総資産利益率)

当期純利益/総資産 × 100

有形固定資産回転率

売上高/有形固定資産(期首・期末の平均)

■税制上の特例措置の内容
 経営資源の集約化によって生産性向上等を目指す経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、当該計画に基づくM&Aを実施した場合に、①中小企業経営強化税制による設備投資減税、②賃上げ等促進税制による税額控除および③準備金の積立による損金算入を認める措置が講じられました。
 ①および②の具体的な取組例としては、M&Aの実施に伴う次のようなケースが想定されます。

具体的な取組例

中小企業経営強化税制

・自社と取得した技術を組み合わせた新製品を製造する設備投資

・原材料の仕入れ・製品販売に係る共通システムの導入

賃上げ等促進税制

・取得した販路で更なる販売促進を行うために必要な要員の確保

 中小企業経営強化税制については、主務大臣の認定を受けた経営力向上計画に記載された一定の設備が対象になりますが、賃上げ等促進税制については、M&Aに伴って行われる労働移転等によって、給与等支給総額を対前年比で2.5%以上引き上げた場合に給与等支給総額の増加額の25%を税額控除、1.5%以上引き上げた場合に15%の税額控除を可能とするものです。

■準備金の積立による損金算入を認める措置
 準備金の積立による損金算入を認める措置については、M&A実施後に発生し得る簿外債務等のリスクに備えるため、据置期間付(5年間)の準備金制度を措置するものであり、M&A実施時に、投資額の70%以下の金額を積み立て、積立額を損金算入できる内容です。
 損金算入により手元に一定額のキャッシュを確保できることになり、簿外債務等のリスクに備えることができます。ただし、5年経過後に5年間で均等に取り崩し、取崩額は益金算入されます。したがって、課税の繰延により、手元のキャッシュをM&A実施後の一定期間確保できる趣旨のものになります。

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