第160回 「適格請求書等保存方式」の仕組みとポイント ~第2回 適格請求書等の交付義務等~

今月のキーワード ―2016年4月―
公認会計士 太田達也


■適格請求書の交付義務


現行の「請求書等保存方式」および平成29年4月から4年間に限り採用される「区分記載請求書等保存方式」においては、請求書の交付義務はなく、不正交付の罰則も置かれていませんが、「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」においては適格請求書の交付義務があり、不正交付の罰則も置かれます。

適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(免税事業者を除く)から適格請求書の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を交付しなければならないとされ(消法57条の4第1項本文)、また、その写しを保存しなければなりません(同条6項)。

ただし、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、適格請求書の交付義務が免除されます(同項ただし書)。一部は政令に委任されています。

適格請求書の交付義務が免除されるもの

・公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送として行われるもの(3万円未満のものに限る)
・媒介または取次に係る業務を行う者(卸売市場、農業協同組合または漁業協同組合等)が委託を受けて行う農水産品の譲渡等
・自動販売機により行われるもの(3万円未満のものに限る)
・その他請求書等を交付することが困難な課税資産の譲渡等のうち一定のもの


■適格請求書類似書類等の交付禁止


適格請求書または適格簡易請求書に類似するものおよび適格請求書の記載事項に係る電磁的記録に類似するもの(以下、「適格請求書類似書類等」という)の交付および提供は禁止され、①適格請求書類似書類等の交付または提供に関する調査に係る質問検査権の規定の整備、②適格請求書類似書類等を交付または提供した者に対する罰則の規定が設けられます。


■適格返還請求書の交付義務


売上げに係る対価の返還等を行う適格請求書発行事業者は、当該売上げに係る対価の返還等を受ける他の事業者に対して、次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下、「適格返還請求書」という)を交付しなければならないとされます(消法57条の4第3項本文)。

ただし、当該適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、当該売上げに係る対価の返還等に際し適格返還請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、交付しなくてよいとされます(同項ただし書)。

適格返還請求書の記載事項

①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
②売上げに係る対価の返還等を行う年月日および当該売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等を行った年月日
③売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(当該売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容および軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
④売上げに係る対価の返還等に係る税抜価額または税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額
⑤売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等または適用税率
  • PRESSLINKS230921

  • 企業懇話会 リニューアル

  • 通信DB インボイス制度関連記事特集

  • 官公庁公表資料リンク集

  • 税務通信テキスト講座

  • 図解でわかる!インボイス制度(11/30まで掲載)

  • 税務通信電子版(アプリ)

  • 経営財務電子版(アプリ)

  • まんが

  • ついった

  • メールマガジン