2019/04/04 9:00
給与所得者の特定支出控除について、具体的な計算方法と実務での留意点を教えてください。
特定支出をした場合の給与所得の計算は、次の手順で行います。
<特定支出控除額の計算手順> (1)給与所得控除額の計算 (2)特定支出控除額の適用判定の基準となる金額の計算 (3)特定支出控除額の計算 (4)給与所得金額の計算 |
なお、特定支出控除の計算の対象となる、①通勤費、②転居費、③研修費、④資格取得費、⑤帰宅旅費、⑥勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)の支出については、いずれも給与の支払者が証明したものに限られます。
1.特定支出額の計算
具体例に沿って計算手順を確認してみましょう。
<前提条件> (1)給与の収入金額 500万円 (2)特定支出の内訳(給与の支払者から証明がされたもの) ① 研修費 30万円 ② 勤務必要経費 70万円 |
(1)給与所得控除額の計算
この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、次のようになります。
1,800,000円以下 | 収入金額×40%(最低65万円) | |
1,800,000円超 | 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 | 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 | 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
500万円(給与の収入金額)×20%+54万円=154万円(給与所得控除額)
(2)特定支出控除額の適用判定の基準となる金額の計算
その年中の給与所得控除額に1/2を乗じて計算した金額が、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額となります。
154万円(給与所得控除額)× 1/2 = 77万円(適用判定の基準となる金額)
(3)特定支出控除額の計算
特定支出の合計額(勤務必要経費は上限65万円)が上記(2)の金額を超える場合には、その超える部分の金額が特定支出控除額となります。
① 特定支出の合計額
30万円(研修費)+65万円(勤務必要経費(※)) =95万円
(※)70万円(勤務必要経費)>65万円 ∴65万円)
② 特定支出控除額の計算
95万円(上記①) - 77万円(上記(2)) = 18万円
(4)給与所得金額の計算
500万円(給与の収入金額)―154万円(給与所得控除額)-18万円(特定支出控除額)=328万円(給与所得の金額)
2.給与の支払者の証明
特定支出控除の適用を受けようとする場合には、給与等の支払者から交付を受けた証明書を、確定申告書などに添付する必要があります。この場合の証明書は、各支出(勤務必要経費については、図書費・衣服費・交際費等の内訳)ごとに発行を受けます。各証明書の様式は次の通りです。
証明書の種類 | 様式 |
特定支出(通勤費)に関する証明書 | 様式1 |
特定支出(転居費)に関する証明書 | 様式2 |
特定支出(研修費)に関する証明書 | 様式3 |
特定支出(資格取得費)に関する証明書 | 様式4 |
特定支出(帰宅旅費)に関する証明書 | 様式5 |
特定支出(勤務必要経費(図書費))に関する証明書 | 様式6 |
特定支出(勤務必要経費(衣服費))に関する証明書書 | 様式7 |
特定支出(勤務必要経費(交際費等))に関する証明書 | 様式8 |
「様式1 特定支出(通勤費)に関する証明書」
本誌関連ページ
ショウ・ウインドウ 特定支出控除と確定申告
No.3542(平成31年2月4日号)63頁