2021/04/05 17:00
経営セーフティ共済は、税務メリットを目的に加入するケースも多いそうですが、具体的にどのような税務メリットがあるのか教えてください。
経営セーフティ共済の掛金は、支出した金額の全額が損金に算入されるため、その分の利益(所得金額)が減少し、結果として、法人税などの利益に対して課される税金の納付額が減少するというメリットがあります。ただし、デメリットになることもあるため、加入する際には慎重に検討をする必要があります。
1.経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済とは、中小企業の取引先が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐことを目的とした共済制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
掛金は毎月5,000円から20万円の範囲で、掛金の累計額が800万円になるまで支出をすることができます。契約期間中に取引先が倒産して売掛金等の回収が困難になった場合には、その回収が困難となった売掛金等の金額の範囲内で、支出した掛金の10倍(最高8,000万円)まで借り入れることができます。
また、共済契約を解約した場合には、解約手当金を受け取ることができます。解約手当金の支給率は解約の理由により異なりますが、任意解約(契約者の都合による解約)の場合、掛金の納付月数が40か月以上では掛金総額の100%、40か月未満では掛金総額の0~95%となっています。
さらに詳しい内容は、経営セーフティ共済のHPを参照してください。
2.加入する税務メリット・デメリット
(1)掛金は損金・必要経費に算入される
経営セーフティ共済の掛金は、支出した金額の全額が、法人であれば損金、個人事業者であれば必要経費に算入されます。このため、その分の利益(所得金額)が減少し、結果として、法人税や所得税などの利益に対して課される税金の納付額を減少させることができます。この点は、支出した事業年度(年)の法人税や所得税の納付額だけをみればメリットと言えます。
なお、掛金を損金(必要経費)に算入するには、確定申告書に必要事項を記載した明細書の添付が要件とされています。添付をしていない場合には、損金(必要経費)に算入することができないため注意が必要です。
(2)解約手当金は益金・収入に算入される
共済契約を解約し、解約手当金を受け取った場合には、受け取った金額の全額が、法人であれば益金、個人事業者であれば収入金額に算入されます。このため、その分の利益(所得金額)が増加し、結果として、法人税や所得税などの利益に対して課される税金の納付額が増加します。つまり、掛金の支出時とは逆の現象が起きます。したがって、掛金の支出時の税率と解約手当金受取時の税率の差によっては、メリットにもデメリットにもなりえるということです。
経営セーフティ共済に限らず、「税務メリット」や「節税」を目的とするものは、特定の事業年度(年)のメリットだけでなく、その後の事業年度(年)のメリット・デメリットを総合的に勘案しなければなりません。
本誌関連ページ
2月決算法人のセーフティ共済掛金の取扱いを確認
No.3643(令和3年2月22日号)4頁