団体交渉の担当者

 団体交渉において、誰が会社側の担当者(出席者)となるべきかということが、会社と労働組合との間で争いになることがあります。

 img_jitsumu_0041.jpg労働組合側の担当者は、労組法6条において、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」と定められていますが、会社側の担当者に関して法律の定めはありません。そこで、会社からの委任を受けていれば、どのような者が出席しても良いのかということが問題になります。たとえば、労働組合は社長の出席を求めているのに対して会社が拒否してよいか、弁護士に担当を委任して出席してもらうことは可能か等といったことが問題になります。

 

 原則として、誰が出席すべきかであるは、当事者が決定すべき事柄であると考えられます。しかし、団交事項について交渉担当能力を有していないような地位の者を出席させることは、不誠実団交とされるおそれがあります。一方、交渉担当能力を有しており、団交事項について十分な議論を行えるのであれば、必ずしも社長や役員が出席する必要があるものではありません。

 裁判例においても、交渉事項について必要な知識と経験を有している者、交渉事項について交渉権限を有している者が出席するのであれば、誰を交渉担当者として指定するかは当事者たる会社の自由であるとされています。また、弁護士が出席することに関しても、基本的には会社の自由であるとされています。もっとも、弁護士のみが出席し、法的見解以外の事実関係の争い等について、何ら知識を有さず、全て持ち帰って検討すると回答することは、団交の意義を失わせるものであると労働組合側から批判されるおそれもあるため、会社従業員も同席することが良いでしょう。

 

 最近の事例としては、出向からの復帰等を議題とする団体交渉において、会社が弁護士を団体交渉の担当者として指定したことにつき、労働組合が、法的アドバイザーとしての発言以外控えるよう指摘するなど、当該弁護士を交渉担当者とすることについて拒否したことから、会社が、当該弁護士を交渉担当者として認めないのであれば団体交渉に応じないとして団交を拒否した事案として、中央労働委員会平成26年10月15日命令があります。

 

 命令は、「使用者が、実質的な交渉をおよそ期待できない者に敢えて交渉権限を与え、団交に出席させた場合は、不当労働行為が成立する余地もあるが、本件における担当弁護士にそのような事情は窺われない」として、不当な団交拒否には当たらないとしました。本件における担当弁護士にそのような事情は窺われない」とは、命令によれば具体的には、出向した他の従業員が加入した別の労働組合との間で、当該弁護士が団交に担当者として出席し、労働審判等にも代理人として対応していた等といった事実関係のことを指しています。また、同事件では、弁護士のみが団交に出席したわけではなく、会社の従業員も出席していました。

 

 弁護士のみが出席した場合、労働組合からの反発は大きいかもしれませんが、会社の担当者も一緒に出席しており、かつ、当該弁護士も一定の交渉担当能力・知識を有しているのであれば、弁護士が交渉担当者となることに特段問題はないと考えるべきでしょう。したがって、会社としては、労働組合から弁護士を外せと主張されても、それが不当な要求である限り毅然とした対応を心掛け、安易に労働組合の要求に応じないことが重要となります。

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