2020/04/22 11:39
新型インフルエンザ等特別措置法に基づき発出されていた国家緊急事態宣言の対象地域が、令和2年4月16日に全国へと拡大されました。
このような国家緊急事態宣言に基づく要請・指示に従って事業を休止する場合、賃金や休業手当の支払いの要否がどのようになるのかということについて、厚労省のQ&Aは次の①および②のいずれの要素も満たしてなければ、休業手当の支払いを要するとしています。
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主が通常の経営者としての最大の注意をつくしてもなお避けることができない事故であること
このうち、今般の国家緊急事態宣言に基づく要請・指示がある場合には、①の要素は満たすものとされています。
一方で、②の要素については、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしているかどうかが問題になるものとされています。
具体的には、
・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情が考慮されることになるとされています。
したがって、休業手当の支払いが不要になる場合のハードルはそれなりにあり、国家緊急事態宣言だから、といった安易な理由で休業しても、休業手当の支払いが必要になる場合が多いといえるでしょう。
また、そもそも、在宅勤務など労務の提供方法が他にあるにもかかわらず休業措置を取る場合には、労務提供が可能であるにもかかわらず使用者側がそれを受領拒絶したものとして、民法536条2項(危険負担)に基づき賃金全額の支払いも求められる可能性があるといえるでしょう。
もっとも、民法は任意規定であるため、就業規則でこれと異なる定めをすることは可能です。その場合であっても労基法26条の定める休業補償は強行規定であるため、賃金の6割を下回る定めをすることはできません。
以上を整理すると以下のようになります。
1 休業を回避するための経営努力を尽くしている場合
賃金および休業補償の支払いは不要になります。
2 休業を回避するための経営努力を尽くしていない場合
休業補償にとどまらず賃金の支払いが必要になりますが、就業規則上、賃金の6割を下回らない額の休業補償に関する定めがあるのであればそれが適用されることになります。
就業規則に特段の定めがなければ、賃金全額の支払いが必要になります。
企業としては、このような事態に備えるためにも、あらかじめ就業規則において休業補償に関して定めておくことが重要といえます(定めていなければ、上記のとおり賃金全額の支払いが必要になるためです。)。