2017/04/24 9:00
平成29年度税制改正により、特定非常災害の被災者である事業者に対して、「調整対象固定資産や高額特定資産の取得による課税事業者の強制」の不適用を認める災害特例が常設化されました。これらの制度の対象となる調整対象固定資産と高額特定資産の違いを教えてください。
1.調整対象固定資産とは
調整対象固定資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で、一の取引の単位(通常一組又は一式で取引の単位とされるものは一組又は一式)に係る税抜対価の額が100万円以上のものをいいます。棚卸資産は対象資産に含まれません。
対象となる一定の課税事業者が、課税事業者が強制される期間中に調整対象固定資産を取得し、かつ、取得した課税期間について一般課税で消費税の申告をした場合には、原則として、取得した課税期間以後の3年間は、免税事業者になることができません。また、簡易課税制度を適用して申告することもできません。つまり、課税事業者として一般課税による申告が強制されるということです。これをいわゆる「3年縛り」といいます。
この規定の対象となる「一定の課税事業者」とは、課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になった者や、新設法人の特例や特定新規設立法人の特例により免税事業者になれない者をいいます。
2.高額特定資産とは
高額特定資産とは、棚卸資産、調整対象固定資産で、一の取引の単位に係る税抜対価の額が1,000万円以上のものをいいます。
課税事業者が、一般課税の適用を受ける課税期間に高額特定資産を取得した場合には、原則として、取得した課税期間以後の3年間は、免税事業者になることができません。また、簡易課税制度を適用して申告することもできません。これは、調整対象固定資産を取得した場合と同様で、いわゆる「3年縛り」として、課税事業者として一般課税による申告が強制されます。
この規定の対象となる課税事業者は、課税事業者になった理由を問いません。したがって、課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となった者はもちろんのこと、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることにより課税事業者となった者も対象となります。
この二つの規定は、取得した課税期間以後の3年間の消費税申告について、課税事業者として一般課税で申告をしなければならない点は共通していますが、対象資産の範囲や対象となる課税事業者の範囲に違いがある点には留意が必要です。
本誌関連ページ
税務の動向 29年度改正 消費税でも特定非常災害による災害特例を常設化
No.3455 (平成29年4月24日号)12頁