2019/05/10 9:00
使用人への賞与の損金算入時期は、法人税法のどこに規定されているのでしょうか。
使用人に対する賞与は、臨時的な給与という位置づけになりますが、その損金算入時期については、法人税法施行令72条の3に規定されています。
第72条の3 内国法人がその使用人に対して賞与( 略 )を支給する場合( 略 )には、これらの賞与の額について、次の各号に掲げる賞与の区分に応じ当該各号に定める事業年度において支給されたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。 (1)労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額の通知がされているもので、かつ、当該支給予定日又は当該通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理をしているものに限る。) 当該支給予定日又は当該通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度 (2)次に掲げる要件の全てを満たす賞与 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度 イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。 ロ イの通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払っていること。 ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。 (3)前2号に掲げる賞与以外の賞与 当該賞与が支払われた日の属する事業年度 |
本文に「事業年度において支給されたものとして」とある通り、使用人賞与はその支給日で損金算入となります。その支給日として、(1)から(3)までが規定されていますが、原則は(3)です。つまり、支払日をもって支給とする支払日基準です。
(1)は、労働協約や就業規則で支給予定日が決まっているケースです。ただし、支給予定日に支払えなかった場合の救済的な規定ですので、実務上はあまり目にすることはないかもしれません。
一方、実務上で利用頻度が高く、論点も多いのは、記事にもあった(2)の支給額通知日基準です。
この基準での肝は、「その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること」という点です。
期末において、使用人賞与として債務が確定していることを証明するための要件です。そのため、期末後の支給日に在職している使用人のみに支給する通知内容となっている場合には、この要件を満たせません。期末において債務が確定しているとは言えないためです。
また、使用人のうち1名の通知が漏れていた場合や、1名の退職者に支給しなかった場合でも、その他の使用人賞与も含め、全額が損金不算入となりますので、注意が必要です。
なお、この通知をせず損金算入をしていた場合には、否認時に重加算税の対象になる可能性が十分に考えられます。そのため、通知書の写しに使用者からの確認印をもらうなど、支給額通知基準を採用する場合には、厳格な対応を心掛けるべきです。
使用人への賞与は、できる限り支払日基準で損金算入すべきと理解しておけばよいですか。
基本的には、その通りです。余計な疑義を避けるため、やむを得ない場合以外は、使用人賞与は支払ってしまうべきです。
ただし、記事にもあったように、未払賞与が損金算入されるか否かで、税額控除の適用の有無や税額控除額に影響します。
実際に、以下のような税理士職業賠償責任保険の事故例もあります。決算賞与の話があった際には、早めの対応が必要です。
平成28年3月期の法人税の申告に当たって税理士は、依頼者から決算賞与を支給する旨の連絡を受けていたにもかかわらず、決算賞与の損金算入を失念した。決算賞与を損金算入していれば、雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(以下「特別控除」という)の適用が可能であったため、決算賞与の損金算入失念及び特別控除適用不可による過大納付法人税・住民税額について、依頼者から損害賠償請求を受けた。
(税理士界第1352号 事例5) |
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No.3547(平成31年3月11日号)6頁