マタハラに関する通達

 平成26年10月23日に、マタハラ事案に関する最高裁判決が出ました。当コラムでも昨年11月に取り上げています。同判決では、妊娠・出産を契機とする降格処分は原則として不利益取扱いに該当するとした上で、①労働者の真摯な同意がある場合、②特段の事情がある場合には、当該降格処分も適法と認められるとしました。そして、労働者の真摯な同意があるか否かは、当該労働者が受ける有利な影響・不利な影響の内容・程度、事業主からの説明の内容その他の経緯、労働者の意向等に照らして判断されるとしました。

 img_jitsumu_0043.jpgまた、同意が存在しない場合における特段の事情とは、降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性や、当該降格措置による有利・不利な影響の程度等に照らして、育児介護休業法の規定の趣旨・目的に実質的に反しないものと認められる場合であるとされています。

 そして、同最高裁判決後、厚労省は均等法や育児介護休業法が禁じる不利益取扱いの解釈に関して通達およびQ&Aを発出しました。最高裁判決よりさらに労働者側に有利に踏み込んだ解釈を行っているため、賛否様々な意見があるところです。

 具体的には、妊娠・出産・育児等を契機として行った不利益取扱いは、これらの法律が禁じる不利益取扱いに該当するとした上で、「契機として」の解釈に関して、妊娠等の事由から1年以内に行われた取扱いは原則として「契機として」行われたものになるとしています。「1年以内」とは、最高裁判決にも出てきていない解釈となります。

 また、最高裁判決が挙げた上記②特段の事情がある場合という例外要件に関して、業務上の必要性が不利益取扱いにより受ける影響を上回ることが必要という新たな解釈を行っています。これは、業務上の必要性に関する会社の裁量の幅をかなり制約する解釈であり、最高裁判決よりも踏み込んだ要件を提示しているため、会社側からすれば異論もあり得るところでしょう。

 そして、最高裁判決が挙げたもう一つの例外要件である①労働者の真摯な同意がある場合に関しても、真摯性を判断するにあたっては、契機となった事由や取扱いによる有利な影響が不利な影響を上回っているかという事情を勘案すべきとしています。そもそも、不利益であっても労働者の同意を得ることに意味があるのであって、有利な措置であれば同意を得る必要もないといえます。したがって、このような事情を勘案して真摯性を判断すべきとすることは、同意を得る手続きの意義をかなり減殺することになるのではないかという疑義が生じます。

 このように、厚労省の通達やQ&Aは、最高裁判決よりもかなり労働者側に有利な解釈を行っており、なお議論の余地があるところですが、裁判所は通達等の解釈にかなりの程度依拠することが多いため、会社としては、妊娠・出産・育児に近接した時期に人事処遇を行うにあたっては、これら通達やQ&Aの内容に十分留意する必要があるでしょう。

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