賃金請求権の消滅時効期間の延長 ~2年から5年へ。だだし、当分の間は経過措置として3年の延長~

 令和2年4月1日から労働基準法が改正され、賃金請求権の消滅時効期間が延長されることになりました。
 賃金請求権の消滅時効期間は、従来は2年でしたが、原則として5年に延長され、ただし、当分の間は経過措置として3年の延長にとどまることとされています。

 消滅時効期間が延長されるのは賃金請求権のみであり、具体的には、金品の返還(労基法23条。賃金の請求に限る)、賃金の支払い(24条)、非常時払い(25条)、休業手当(26条)、出来高払制の保障給(27条)、時間外・休日労働党に対する割増賃金(37条)、年次有給休暇中の賃金(39条9項)、未成年者の賃金請求権(59条)となります。

 一方で、従来の時効期間が維持される請求権としては、以下のものがあります。
・災害補償の請求権
療養補償(75条)、休業補償(76条)、障害補償(77条)、遺族補償(79条)、葬祭料(80条)、分割補償(82条)
・そのほかの請求権
帰郷旅費(15条3項、64条)、退職時の証明(22条)、 金品の返還(23条。賃金を除く。)、年次有給休暇請求権(39条)
・退職手当

 これらのうち、退職手当は5年、それ以外は2年という従来の時効期間が維持されることになります。

 今般の改正による新しい消滅時効期間は、改正法の施行期日以降に支払期日が到来する賃金の請求権に適用されます。

 今般の法改正で、経過措置を設けて当分の間は時効期間が3年とされたのは、労基法109条に規定する記録の保存期間に合わせることで、企業の記録保存にかかる負担を増加させることなく、未払い賃金等に係る一定の労働者保護を図ったためとされています。
 一方で、災害補償請求権について従来の2年の短期消滅時効期間が維持されたのは、業務起因性に関しては時間の経過とともにその立証が労使双方にとって困難となることから、早期に権利を確定させて労働者救済を図ることが制度の本質的な要請であるという点が考慮されたためとされています。ややわかりづらい理由ですが、基本的には、仮に見直しを検討する場合には、労災保険制度のほか、労働保険・社会保険も含めた制度の一体的な見直しが必要となるため、ひとまず今般は改正が見送られたものと考えられます。

 今般の改正については、改正法の施行から5年経過後の施行状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講じることとすべきとされているため、その段階で、改めて原則どおり5年の消滅時効期間とするかどうかが検討されることになるものと考えられます。仮に5年に延長される場合には、記録の保存期間も併せて5年に延長されることになるものと考えられます。


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