会社分割と労働契約の承継

 事業譲渡、合併、分割など、会社間で事業が譲渡・承継される場合、これに伴って労働契約関係はどのような変動を受けるかということが問題になります。

 img_jitsumu_00540jpg.jpg事業譲渡は、どのような権利義務を承継させるかということを譲渡元と譲渡先との間の契約で個別に定めるため、労働契約関係を承継しない旨定めることも可能です。一方、合併の場合には、包括承継といって、権利義務の全てが承継されることになるため、当然に労働契約関係も承継されることになります。

 これに対し、会社分割の場合については、労働契約承継法によって、労働契約の承継が規律されています。会社分割とは、事業に関して有する権利義務の一部または全部をほかの会社へ承継させる手続きになります。どのような権利義務が承継されるかは、分割契約書の定めによって決まることになりますが、労働契約関係を承継するか否かについて、分割元と分割先との間の合意によって自由に定められるとすると、これまで承継対象の事業に従事していた労働者が、承継対象から除外されて仕事がなくなるといった事態が生じかねないため、労働契約承継法によって一定の保護が図られています。

 具体的な規律は以下のとおりです。

(1)労働契約の承継に関して
 承継対象の事業に主として従事する労働者を承継対象に含める場合は問題なく承継されるものの、主として従事する労働者を承継対象から除外している場合には、一定の期間内に書面で分割会社に異議を申し出れば承継会社等に承継されることとされています。一方、主として従事している労働者以外の労働者については、原則として、労働契約は承継されません。もっとも、当該労働者の労働契約が承継対象に含まれている場合には、一定の期間内に書面で分割会社に異議を申し出れば承継されないことになります。

このように、承継対象となった事業に主として従事している労働者であるか否かによって、取扱いが異にされており、主として従事している者は承継され、それ以外の者は承継されないという扱いが原則とされています。

(2)労働契約承継の手続き
 会社分割に伴って労働契約も承継されるか否かという問題については前述のとおりですが、労働者の理解を得るための適正手続きとして、①個別労働者との事前協議、②労働者および労働組合への通知の手続きが法律上定められています。

 個別労働者との事前協議に関しては、承継される事業に従事している全ての労働者に対して行う必要があります。協議事項は次のとおりです(指針第2、4(1)イ)。
 ①承継会社の概要(事業者名、所在地、事業内容、従業員数)
 ②労働者が承継営業に主として従事する者に該当するか否かの考え方などを十分説明し、本人の希望を聴取したうえで、
  ア 新設(吸収)会社への労働者の承継の有無、
  イ 承継する場合でもしない場合でも、会社分割後に従事することを予定する業務の内容、就業場所その他の就業形態など

 また、労働者への通知とは、前述した異議を申し出る機会を確保するための措置となります。労働組合への通知は、労働協約を締結している労働組合のみが対象となりますが、これは、承継によって労働協約の主体に変動があるためです(なお、労働協約の取扱いについては、細かな規律が規定されていますが詳細は割愛します)。

(3)その他手続きに関する努力義務
上記のほか、努力義務ではありますが、労働者の理解と協力を得るための手続きが、法令等によって定められています。

 まず、労働契約承継法は、分割会社が分割に当たり、雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める旨が規定されています(法7条)。
これを受けて、承継法施行規則および指針は、その具体的な方法として、分割会社がすべての事業場において労働者の過半数を組織する労働組合または過半数代表者との事前協議その他これに準ずる方法によって労働者の理解と協力を得るよう努める必要があると定めています(承継法施行規則4条及び厚生労働大臣が決めた指針第2、4(2))。
さらに、指針により協議の内容と対象事項が定められています(指針第2、4(2))。具体的な協議対象事項は次のとおりです。
 ①会社分割をする背景および理由
 ②分割会社・新設(吸収)会社等が分割後に負担すべき債務の履行に関する事項
 ③労働者が「承継される事業に主として従事する労働者」に該当するか否かの判断基準
 ④労働協約の承継に関する事項(労働協約を締結している労働組合とは、労働協約の承継をどうするのか協議し、分割契約等の締結又は作成前に同意することが望ましいとされている。)
 ⑤分割会社または承継会社等と労働組合・労働者との間で生じた労働関係上の問題を解決するための手続

以上のとおり、現在は法律によって会社分割と労働契約の承継関係が規律されているため、特に手続き的な不備がないように措置を進めていくことが重要となります。

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