第174回 所得拡大促進税制は中小企業者に格段に有利に ~平成29年度税制改正による適用要件の見直し~

今月のキーワード ―2017年6月―
公認会計士 太田達也

■所得拡大促進税制の適用要件

平成29年度税制改正前の適用要件は、次のとおりでした。

所得拡大促進税制の適用要件(改正前)

① 当期の「雇用者給与等支給増加額」/「基準雇用者給与等支給額」 ≧x%(注)
② 当期の「雇用者給与等支給額」 ≧ 前期の「雇用者給与等支給額」
③ 当期の「平均給与等支給額」 > 前期の「平均給与等支給額」
平均給与等支給額の対象給与等 → 継続雇用者(適用年度およびその前年度の両方で支給を受けた国内雇用者をいう)に対する給与等支給額で、一般被保険者に該当する者に対して支給するものに限る。

(注)平成25年度および平成26年度は2%、平成27年度は3%、中小企業者等の平成28年度および平成29年度は3%、中小企業者等以外の平成28年度は4%および平成29年度は5%です。なお、平成25年度とは、平成25年4月1日以後に最初に開始する事業年度という意味です(他の年度についても同様)。

上記の①から③をすべて満たす場合に、当期の雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額(平成24年度の雇用者給与等支給額)を控除した額(「雇用者給与等支給増加額」といいます)の10%相当額を税額控除できるという内容でした。
なお中小企業者以外の法人の場合は、当期の法人税額の10%を上限に税額控除することができ、中小企業者の場合は、当期の法人税額の20%を上限に税額控除することができます。


■平成29年度税制改正後の適用要件

平成29年度税制改正により、中小企業者以外と中小企業者で、次のように取扱いが区別されました。


1. 中小企業者以外の法人の場合
上記の①および②の要件はそのままとし、③について次の要件に変更されました。要件が改正前より厳しくなっています。

当期の平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額に対して2%以上増加すること


適用要件を満たす場合には、雇用者給与等支給増加額の10%相当額に、当期の雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した額(雇用者給与等支給増加額を限度とします)の2%相当額を税額控除額に上乗せすることが認められます。

2. 中小企業者の場合
中小企業者に係る適用要件は、上記の①から③で、従来と変わりません。
ただし、当期の平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額に対して2%以上増加した場合の税額控除限度額は、雇用者給与等支給増加額の10%相当額に加え、当期の雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した額(雇用者給与等支給増加額を限度とします)の12%相当額が上乗せされます。
平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額に対して2%以上増加した場合には、税額控除限度額がかなり大きくなります。この措置は、事業主が負担する社会保険料に配慮されたものとされています。


■具体例

中小企業者の事業年度別の雇用者給与等支給額が、次のとおりであったものとします。
201706-1.png
また、当期(平成30年3月期)の平均給与等支給額が前期(平成29年3月期)の平均給与等支給額に対して2%以上増加したものとします。
平成30年3月期の税額控除限度額は、次のとおりとなります。

税額控除限度額
=雇用者給与等支給増加額×10%+(当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×12%
=(56,800,000円-52,600,000円)×10%+(56,800,000円-54,700,000円)×12%
=420,000円+252,000円
=672,000円

平成29年度税制改正前の制度では420,000円であったところ、改正後は252,000円が上乗せになり、672,000円になります。