第150回 所得拡大促進税制における新設法人の特例 ~平成25年4月1日以後に設立された法人は、特例により100%適用可~

今月のキーワード ―2015年6月―
公認会計士 太田達也

■所得拡大促進税制の適用要件

平成25年度税制改正により創設された所得拡大促進税制ですが、平成26年度税制改正および平成27年度税制改正と2度にわたる要件緩和が行われ、現在では次のとおりとなっています。

所得拡大促進税制の適用要件

① 当期の「雇用者給与等支給増加額」/「基準雇用者給与等支給額」 ≧ 2%(注)
② 当期の「雇用者給与等支給額」 ≧ 前期の「雇用者給与等支給額」
③ 当期の「平均給与等支給額」 > 前期の「平均給与等支給額」
(平均給与等支給額の対象給与等 → 継続雇用者(適用年度およびその前年度の両方で給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する給与等支給額で、一般被保険者に該当する者に対して支給するものに限る。)


(注)平成25年度および平成26年度は2%以上であるが、平成27年度以降は次のとおりである。

25年度 26年度 27年度 28年度 29年度
中小企業者等 2%以上 2%以上 3%以上 3%以上 3%以上
上記以外 2%以上 2%以上 3%以上 4%以上 5%以上



■新設法人の特例


上記の①の要件における分母の「基準雇用者給与等支給額」は、本来、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度(基準事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額と規定されています。

しかし、平成25年4月1日以後に設立された法人(以下、「新設法人」といいます)については、基準事業年度がありません。そこで、新設法人の「基準雇用者給与等支給額」は、最も古い事業年度(設立の日を含む事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額の70%相当額と規定されています(措法42条の12の4第2項4号ハ)。

なお、上記の新設法人から、合併、分割および現物出資により設立された法人を除きます(措法42条の12の4第2項4号ハかっこ書)。

■新設法人は必ず適用要件を満たす


新設法人の設立事業年度については、雇用者給与等支給額が1円以上発生していれば、上記の適用要件の3つを必ず満たすことになります。適用要件①については、基準雇用者給与等支給額が設立事業年度の雇用者給与等支給額の70%相当額と規定されていることから、70%相当額が100%相当額に増加したという判定になりますので、必ず要件を満たします。適用要件②と③については、設立事業年度には前期がありませんので、前期の雇用者給与等支給額および平均給与等支給額はゼロということになり、必ず要件を満たします(なお、平均給与等支給額の分子にくる当期の継続雇用者給与等支給額がゼロであっても、1円とする規定が置かれているため、③の要件を満たします)。

新設法人の設立事業年度において納税が発生する場合には、必ずこの制度の特例を受けるべきです。適用を失念している例が結構あるようです。

なお、別の税制である雇用促進税制(措法42条の12)は、設立事業年度を対象外にしていますので、適用できません。

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