2016/06/01 11:40
今月のキーワード ―2016年6月―
公認会計士 太田達也
■平成28年度税制改正の内容
建物附属設備・構築物および鉱業用の建物等の償却限度額の算定方法について、定率法が廃止されました。すなわち、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物については定額法のみが認められ、同日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る)については、定額法または生産高比例法によることになりました。
改正後の償却方法(平成28年4月1日以後取得分)
資産の区分 | 償却限度額の算定方法 |
建物附属設備および構築物 | 定額法 |
鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る) | 定額法または生産高比例法 |
■既存の設備と新規設備
平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備・構築物は、定率法または定額法のいずれかを選択できるとされていました。定率法を適用している企業が多いと思われます。平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備・構築物に定率法を適用している場合は、耐用年数終了まで定率法をそのまま適用することになります。一方、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物については、選択の余地はなく、定額法によることになります。
資本的支出については、原則として、新規資産の取得とみなして償却します(法令55条1項)。したがって、既存の建物附属設備・構築物が定率法適用であっても、それらに対して平成28年4月1日以後に行われた資本的支出については、定額法が適用されます。本体と資本的支出に異なる償却方法が適用されるケースが生じますので、留意が必要です。
また、平成19年3月31日以前に取得された旧定額法または旧定率法が適用されている建物附属設備・構築物に対して行われた資本的支出については、それが平成28年4月1日以後に行われたものであっても、既存の建物附属設備・構築物の取得価額に資本的支出の金額を加算して、一体として旧償却方法で償却計算する特例(法令55条2項)の適用も認められます。
しかし、資本的支出を行った事業年度の翌事業年度の期首に既存の資産の帳簿価額と資本的支出の帳簿価額を合算した金額を取得価額とする1つの減価償却資産を取得したとみなして償却する特例(法令55条4項)の適用は認められません。定率法同士でないと、この特例は認められないからです。
根拠規定 | 適用の可否 | |
原則 | 法令55条1項 | ○ |
特例 | 法令55条2項 法令55条4項 |
○ × |
■会計上の取扱い
企業会計基準委員会が本年4月22日に公表した「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」によれば、従来、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理している企業において、建物附属設備および構築物の減価償却方法について定率法を採用しているときに、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備および構築物の減価償却方法を定額法に変更する場合、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うものとされました。
この取扱いに従えば、会計上も、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物から定額法に変更することが容易にできます。この場合は、会計と税務で償却方法を一致できますので、二重計算の問題を避けることができます。