2020/06/04 12:00
新型コロナウイルス感染症に関連する緊急経済対策により、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰戻還付の規定の適用の対象となる法人の範囲が拡大されたとのことですが、拡大前の適用対象法人である中小企業者等の範囲を教えてください。
欠損金の繰戻還付の適用を受けることができる「中小企業者等」とは、普通法人のうち資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないものなどをいいます。
1.欠損金の繰戻還付の対象となる欠損金額とは
欠損金の繰戻還付は、次に掲げる欠損金額を除き、平成4年4月1日から令和4年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用が停止されています。
<欠損金の繰戻還付の対象となる欠損金の種類> ① 中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金額 ② 清算中に終了する事業年度の欠損金額 ③ 災害損失欠損金額及び設備廃棄等欠損金額 ④ 解散等の事実が生じた場合の欠損金額 |
つまり、欠損金の繰戻還付は、解散や清算、災害などの特殊要因がない事業年度においては、中小企業者等のみが適用を受けられる制度といえます。これが、今回の緊急経済対策により資本金の額等が10億円を超えるなど一定の要件に当てはまる大規模法人以外の法人が適用を受けられることになりました。
<欠損金の繰戻還付の適用対象法人(解散・清算・災害関係を除く)> 現行法:中小企業者等のみ ↓ 緊急経済対策:大規模法人等以外(※) |
(※)大規模法人等について詳細は、税務通信No.3604 令和2年5月11日号で解説していますので参照してください。
2.中小企業者等の範囲
中小企業者等とは、次に掲げる法人をいいます。
<中小企業者等の範囲> ① 普通法人(※1)のうち、その事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(※2)又は資本若しくは出資を有しないもの(※3) (※1)投資法人、特定目的会社を除く。 (※2)大法人との間に大法人による完全支配関係のある普通法人を除く。 (※3)保険業法に規定する相互会社及び外国相互会社を除く。 ② 公益法人等又は協同組合等 ③ みなし公益法人等のうち一定のもの ④ 人格のない社団等 |
今回の緊急経済対策は、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額に限定して、適用の対象となる法人の範囲を拡大しています。したがって、この対象法人の範囲の拡大措置は、令和2年1月31日に事業年度が終了した1月決算法人は適用の対象外となり、令和2年2月29日に事業年度が終了した2月決算法人は適用の対象になります。
しかし、2月決算法人であれば、既に確定申告書が提出済みであることも考えられます。そこで、今回の緊急経済対策では、適用の対象となる法人であれば、令和2年7月1日前(=令和2年6月30日まで)に確定申告書が提出済みの法人であっても、令和2年7月31日までに還付請求書を提出することにより、欠損金の繰戻還付の適用を受けることができる措置も併せて講じられています。
対象となる欠損金額が生じた事業年度によって、適用を受けることができる法人の範囲が異なる点にご注意ください。
本誌関連ページ
与党税調 新型コロナ対応で税制上の支援策を固める
No.3600(令和2年4月6日号)2頁