社会保障協定

img_onepoint_0079_01.jpg今年の気候はどうなっているのでしょうか。先月(5月)の段階ですでに真夏日を迎えた地点が多く、職場での夏場対策を前倒しにする必要もありそうですね。さて、先の5月16日に北京において「日本と中国の社会保障協定」の公文交換が行われました。これにより「日・中社会保障協定」が令和元年9月1日より効力が生ずることになりました。今回はこの「社会保障協定」の仕組みについて触れてみたいと思います。

協定の背景
グローバル化の進展に伴い、日本に来て働く外国人の方が増加しています。厚生労働省における「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ(平成30年10月末現在)によれば、外国人労働者数は1,460,463人で、前年同期比181,793人、14.2%の増加(平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新)となっています。これらの方々も例外を除き日本の社会保障制度に加入する必要があるのですが、何の策もない場合、日本の社会保障制度と母国の社会保障制度の両方に加入し、保険料を二重に負担しなければならない場合が生じてしまいます。また、年金の受給には一定期間の加入が必要な為、帰国した場合は保険料の掛け捨て、または請求による返還(減額)になるという事態もあり得ます。

協定の仕組み
社会保障協定は上記のような「保険料の二重負担防止」や保険料の掛け捨てとならないために、そして、日本の年金制度に加入していた期間を相手国の年金制度に加入していたものとみなす「年金加入期間の通算」を実現した仕組みです。この仕組みを有効とするためには我が国と対象となる相手国との二国間協定が必要となります。協定の内容は、基本的にそれぞれ同様の取扱いとなっていますが、協定を締結する相手国の制度内容に応じて、その取扱いが異なる箇所があるので注意が必要です。

協定の締結状況
2019年6月時点における、社会保障協定の発効状況は以下の表になります。

協定が発行済の国 ドイツ イギリス 韓国 アメリカ ベルギー フランス カナダ
オーストラリア オランダ チェコ スペイン アイルランド ブラジル
スイス ハンガリー インド ルクセンブルク フィリピン スロバキア
署名済みだが未発効の国 イタリア 中国(本年9月から発効予定) スウェーデン

日本は22ヶ国と協定を署名済で、うち19ヶ国は発効しています(これに9月から中国が加わる予定です)。

協定発効後の例
協定が発効している国の場合、原則として働いている国の社会保障制度のみに加入することになります。つまり、派遣元国の事業主により日本の支店などに派遣された場合や日本の企業に採用された場合には、日本の社会保障制度のみに加入することになります。

母国の社会保障制度 日本の社会保障制度 母国の社会保障制度

              来日▲     日本で勤務      ▲帰国

注意点1「一時派遣の例外」
外国で外国企業に雇用された方が日本の支店等に5年を超えない見込みで派遣される場合には、協定の例外規定が適用され、引き続き派遣元国の社会保障制度のみに加入し、日本の社会保障制度の加入が免除される仕組みになっています。

注意点2「協定内容の違い」
協定内容は基本的に「保険料の二重負担防止」と「年金加入期間の通算」ですが、一部の国で違いがあります。例えば、イギリス、韓国、イタリア、中国については、「保険料の二重負担防止のみ」となっており、「年金加入期間の通算」は適用されません。

企業での対応
今後、日本の企業でも外国人を雇用する機会が増加することが予想されますが、5年未満の外国企業からの派遣等の例外を除き、今まで同様、日本の社会保障制度に加入させる義務が事業主にはあります。その際、加入を嫌がる外国人の方が社会保障協定の締結国だった場合、「あなたの国は日本と協定がありますから無駄にはならない」旨の説明をしてあげると、理解が得られやすくなると思われます。また、日本人が外国に行った場合も、今回の協定内容は同じ効力が得られます。もっと多くの国と協定が結ばれるようになるといいですよね。