年度更新と定時決定時のコロナ禍対応
ようやく緊急事態宣言が解除されましたが、新型コロナ感染の危険性がなくなったわけではありません。引き続き職場での衛生体制は緩めないでください。
さて、このような状況ではありますが、早くも「労働保険の年度更新」と「社会保険の定時決定」の時期が来ました。今回は新型コロナ感染症の影響を受けている事業所が多いことと思いますので、会社担当者の方は内容ご確認の上、ご対応ください。
労働保険の年度更新
例年、労働保険の年度更新は6月1日から7月10日までに申告書の提出期限と決められていますが、今回は下記のように期限が8月31日まで延長になりました。
<申告期限>
|
従来 |
今回の延長後 |
申告期限 |
6月1日~7月10日 |
6月1日~8月31日 |
納付期限 (全期・第1期) |
7月10日 |
8月31日 |
口座振替納付日( 〃 ) |
9月7日 |
10月13日 |
上記のように申告期限が8月31日に延長されましたが、納付期限も8月31日です。
また、新型コロナ感染症等により休業した際の休業手当の額も、労働保険料賃金総額に含めなければなりません。
労働保険料の猶予(特例)
新型コロナ感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)で事業収入が20%以上減少し、労働保険料の納付が困難である場合は、所轄の都道府県労働局に「労働保険料等納付の猶予申請書(特例)」を提出することで、担保なく納付が1年間猶予される制度があります(令和2年2月1日から令和3年1月31日までの労働保険料)。なお、通常通り申告期限までに労働保険料の申告を行っておくことが必要ですのでご注意ください(「猶予を希望するので申告は不要」とはならないということです)。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000633473.pdf
社会保険の定時決定(算定)
今回の社会保険の定時決定では、「新型コロナ感染症による休業の扱い」が独特です。7月1日時点で新型コロナ感染症等の影響による一時休業が「解消していない場合」と「解消している場合」では以下のように扱いが異なります。
①<7月1日時点で一時帰休(休業)の
状況が解消していない場合>
新型コロナ感染症等による休業状態が解消されていない場合、(4月から6月に実際に支払われた)通常の給与額だけでなく、
休業手当が含まれる月の給与額も合わせて報酬月額を算出します。
<記入モデル例>
支払月 |
日数 |
通貨 |
現物 |
合計 |
|
備考)「9その他」欄に休業手当の支払月、休業の実施期間(○月から一時帰休)と記入。 |
4 |
31 |
282,600円 |
0円 |
282,600円 |
(総計)732,600円 |
⑨.その他(6月休業手当5月から一時帰休) |
5 |
30 |
277,900円 |
0円 |
277,900円 |
(平均)244,200円 |
6 |
31 |
172,100円 |
0円 |
172,100円* |
(修正平均) |
*休業を含んだ月の給与額も算定の基礎に含める。
②<7月1日時点で一時帰休(休業)の
状況が解消している場合>
4月から6月に支払われた給与のうち、
休業手当を含まない月を算定対象とします(なお、4~6月のいずれも休業手当が支払われている場合は、低額な休業手当等に基づいて決定または従前の標準報酬月額で算定されるとしています)。
<記入モデル例>
支払月 |
日数 |
通貨 |
現物 |
合計 |
|
備考)「9その他」欄に休業手当の支払月、休業の実施期間(○月から一時帰休)と記入。 |
4 |
31 |
134,300円 |
0円 |
- * |
(総計)549,100円 |
⑨.その他(4月休業手当4/22から一時帰休解消) |
5 |
30 |
272,000円 |
0円 |
272,000円 |
(平均)274,550円 |
6 |
31 |
277,100円 |
0円 |
277,100円 |
(修正平均) |
*休業を含んだ月の給与額は算定の基礎に含めない。
①②の表 日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和2年度)」より抜粋の上一部変更
日本年金機構 HP
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202005/0520.html
なお、社会保険料について最長1年間猶予される「換価の猶予」制度についても、通常必要な担保が不要となる特例が適用可能になっています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10866.html
まとめ
新型コロナ禍による影響で本当に大変な時期と思います。しかし、年度更新も定時決定も正しく記入して提出しておかないと、後日、修正等が入りもっと手間がかかってしまいますので、しっかり、間違いのないようにしておいてください。また、作成・提出を社会保険労務士に委託している場合、自社の休業情報をお伝えしておかないと正しい内容になりませんので、きちんと情報提供することも忘れないようにしましょう。