パワー・ハラスメント防止措置の義務化

img_jitsumu_0091.jpg労働施策総合推進法が改正され、パワー・ハラスメント対策の法制化が行われました。これと併せて女性活躍推進法も改正されています。法改正により、企業はパワー・ハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられるようになりました。

これまで、セクシュアル・ハラスメントやマタニティ・ハラスメントについては、法律上、企業に防止措置を講じることが義務付けられていましたが、パワー・ハラスメントについては明文の規定が存在していませんでした。
しかし、パワー・ハラスメントをめぐるトラブルは増加しており、労働者が健康に働くための良好な職場環境を整備するためには、パワー・ハラスメントの防止措置を講じることが、他のハラスメントの防止措置と同様に非常に重要になるものと考えられていました。そこで、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業雇用対策法生活の充実等に関する法律」(旧雇用対策法)略して「労働施策総合推進法」が令和元年5月29日に改正され、「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」に関する条文として同法30条の2が新たに制定されました。「職場における優越的な関係を背景とした言動」がいわゆるパワー・ハラスメントのことを意味します。
新設された同条は次のとおり定めています。

第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背(新設)景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの によりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう 、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない 。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたとこを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において『指針』という。)を定めるものとする。
4 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。
5 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
6 前二項の規定は、指針の変更について準用する。


同法はパワー・ハラスメントを、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と定義し、企業は、このような言動により労働者の就業環境が害されることのないよう防止措置として、「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定めています。

国は、事業主が講ずべき措置に関する指針を策定するものとされておりますが、現在、まだ指針の内容は公表されていません。
類似するものとして、セクシュアル・ハラスメントの防止措置に関する指針があり、パワー・ハラスメントの防止措置に関しても参考になるものと考えられます。
同指針(平成18年厚生労働省告示第615号)は、セクシュアル・ハラスメントの防止措置について、①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発、②相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるセクシュアル・ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、④その他、プライバシー保護や不利益取扱いの禁止の徹底等を定めています。
パワー・ハラスメントの防止措置に関しても、今後の指針の動向を注視する必要があるでしょう。

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