時間外労働の上限規制について

厚生労働省の労働政策審議会は、本年6月5日、「時間外労働の上限規制等について」という建議を公表しました。

これは、政府が進めている働き方改革の一環であり、いわゆる一億総活躍社会の実現を目的とした施策です。日本では、この20年間で一般労働者の年間総実労働時間が2,000時間を上回る高い水準で推移しており、年間の労災支給決定件数は、脳・心臓疾患が251件、精神障害が472件といずれも高い水準にあります。

img_jitsumu_0066-2.jpg長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっていると考えられています。「過労死等ゼロ」を実現するとともに、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくため、長時間労働の是正は喫緊の課題とされています。

このような考え方に基づき、時間外労働の上限規制の導入について議論を重ねた後、上記建議がまとめられるに至っています。
建議の具体的な内容は次のとおりです。

1 基本的枠組み
これまでは、労使間で合意した臨時的な特別の事情がある場合には上限無く時間外労働が可能となっていましたが、今後は上回ることのできない上限を設定することが検討されています。
これによれば、原則として時間外労働が月45時間、年360時間を超えることはできず、違反した場合には罰則の適用があります。また、労使協定に基づき、臨時的な特別の事情がある場合には上限を延長することは認められるものの、その上限についても、年720時間を超えてはならず、また、
① 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内
② 休日労働を含み、単月で100時間未満
③ 原則である月45時間の時間外労働を上回る回数は年6回まで
という上限を設けることが適当とされています。

2 勤務間インターバル
前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを休息として確保することについては、措置義務ではなく努力義務にとどまるものとされています。
努力義務であるため、違反した場合に罰則等の制裁はありませんが、インターバルを設けないことが過重労働の一要因として考慮され、結果的に安全配慮義務違反が認定される等といったことは考えられます。

3 適用除外について
現行法上、時間外労働の上限規制の適用除外とされている職種については、上限規制を新たに適用するまでに一定の猶予期間が設けられる予定です。
適用除外の職種は、①自動車の運転業務、②建設事業、③新技術、新商品等の研究開発の業務、④季節的要因等により事業活動もしくは業務量の変動が著しい事業・業務または公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務、⑤医師となります。
今後、同建議を踏まえて立法化の作業が進められることになるため、引き続き動向を注視する必要があるでしょう。