第223回 少額減価償却資産の判定~「通常1単位として取引されるその単位」とは~

■10万円基準で判定
 減価償却資産を取得し、その取得価額が10万円未満である場合、その資産を事業の用に供した日の属する事業年度において取得価額に相当する金額を損金経理したときは、その事業年度の損金の額に算入することができるとされています(法令133条)。取得価額基準ですから、購入代価だけではなく、付随費用や事業の用に供するために直接要した費用を加えて10万円未満であるかどうかを判定することになります。
 取得価額が10万円未満であるかどうかを判定する単位は、「通常1単位として取引されるその単位」で判定するものとされています。なお、一括償却資産(法令133条の2)の20万円基準についても、同様に判定します。

■「通常1単位として取引されるその単位」とは
 「通常1単位として取引されるその単位」とは、次のような観点に留意して判断することが考えられます。

①本来の目的を失うことはないのか
 資産としての機能を発揮することができる単位はどのようになっているのか。本来は、1つ1つを使うのではなく、1組または1そろいとして使うために作られていないかどうか。他の資産と組み合わせないでも単独で機能するのか。
②デザイン等に関連性はないか
 デザインや素材等に共通性・関連性があり、1つを切り離したときに半端にならないのか。

 最高裁の判例では、「当該企業の事業活動において、資産単独であっても、機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものを単位ととらえて、その取得価額を判定すべきである。」旨が示されています(最高裁(平成20年9月16日)民集第62巻8号2089頁)。

■パソコンとプリンターを同時に購入した場合
 パソコンとプリンターを同時に購入した場合であっても、そのパソコンは他のプリンターと組み合わせて使用することができるし、逆にそのプリンターは他のパソコンと組み合わせて使用すれば機能を発揮します。パソコンとプリンターは別個の取引単位とみることができます。パソコン1台の金額、プリンター1台の金額により、それぞれが少額減価償却資産に該当するかどうかを判定すればよいと考えられます。
 同様に、内線電話機は、1台1台を単位として使用する目的で作られており、また、デザインや素材等の共通性の観点から、1台を切り離したとしても、半端なものになることはありません。したがって、複数台を同時に購入した場合であっても、内線電話機1台が「通常1単位として取引されるその単位」であると考えられ、1台の取得価額により判定すればよいと考えられます。
 また、内線電話機を電話交換機と同時に購入した場合であっても、内線電話機は、電話交換機とは別の減価償却資産とみることができるため、内線電話機1台の取得価額で判定することで問題ないと考えられます。すなわち、内線電話機と電話交換機を同時に購入した場合であっても、各内線電話機はその電話交換機と組み合わせないと使用できないわけではなく、他の事務所の電話交換機と組み合わせて使用することができます。各内線電話機は単独で機能するという見方をすることになると考えられます。

■ソフトウエアのライセンス契約の場合
 ソフトウエアをライセンス契約で購入するケースが多くみられます。通常のソフトウエアと同様に、原則として、無形固定資産として資産計上し、5年の定額法で償却を行うことになります。
 ただし、取得価額の総額を、付与されたライセンス(使用権限)の数で按分したライセンス1個あたりの価額を取得価額とし、少額減価償却資産の判定を行うことができると考えられます。ライセンスの使用権限1個1個が「通常1単位として取引されるその単位」であると考えられるからです。
 なお、いわゆるボリュームライセンスによる購入のように、まとめ買いで価格が安くなることから一括購入する形態をとった場合も、そのソフトウエアが、通常単体でも販売されており、単体でも機能するということであれば、同様に判定することが考えられます。

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