第151回 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度のポイント ~教育資金の一括贈与との相違点等~

今月のキーワード ―2015年7月―
公認会計士 太田達也


■結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の創設


平成27年度税制改正により、少子化対策として、一括贈与により若年層の経済的不安を解消し、結婚・出産を後押しするために、次の非課税制度が創設されました。すなわち、個人(20歳以上50歳未満の者に限る)の結婚・子育て資金の支払に充てるために、その直系尊属(贈与者)が金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合には、信託受益権の価額または拠出された金銭等の額のうち、受贈者1人につき1,000万円(結婚に際して支出する費用については300万円を限度)までの金額に相当する部分の価額については、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする制度です。


■教育資金の一括贈与に係る非課税制度との共通点


手続の面では、平成25年に創設された教育資金の一括贈与に係る非課税制度と類似した点が多いと思われます。すなわち、受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した非課税申告書を、金融機関を経由し受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。また、受贈者は、払い出した金銭を結婚・子育て資金の支払いに充てたことを証する書類を金融機関に提出し、金融機関は提出された書類により払い出された金銭が結婚・子育て資金の支払いに充当されたことを確認し、その確認した金額を記録するとともに、その書類および記録を「結婚・子育て資金管理契約」の終了の日の翌年3月15日後6年を経過する日まで保存しなければならないとされています。


■契約終了時の課税の取扱い


結婚・子育て資金管理契約は、次のいずれかの事由により終了します。

① 受贈者が50歳に達した場合
② 受贈者が死亡した場合
③ 信託財産等の価額がゼロとなった場合において、終了の合意があったとき


上記の①または③の事由により契約が終了した場合に、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額(いわゆる「使い残し残額」)があるときは、これらの事由に該当した日に当該残額の贈与があったものとして受贈者に課税が行われます。一方、上記の②の事由により契約が終了した場合は、贈与税は課されません。


■教育資金の一括贈与に係る非課税制度との相違点


両者に課税上の取扱いに大きな違いがある点に留意する必要があります。契約終了の時の使い残し残額について贈与税が課される点は共通しますが、契約期間中に贈与者が死亡したときの取扱いに重要な相違点があります。

すなわち、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の場合、契約期間中に贈与者が死亡したときは、当該死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額について、受贈者が贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなして、贈与者の相続税の課税価格に加算されます(この場合、孫でも2割加算の対象にはなりません)。この取扱いは、相続税回避の防止を図る趣旨かと思われます。

一方、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の場合は、契約期間中に贈与者が死亡しても、使い残し残額について相続税の課税対象にはなりません。


■各種非課税贈与特例の重複適用


住宅取得資金の贈与非課税特例、教育資金の一括贈与非課税特例、結婚・子育て資金の一括贈与非課税特例と、直系尊属からの贈与に係る非課税特例制度のメニューが増えてきました。これらの非課税特例は重複適用できますので、うまく計画的に活用していくと、かなりの額の贈与について非課税の恩恵を受けることができます。次世代への資産の移転を計画的に行いやすい環境が整備されてきたとみることができます。

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