第187回 収益認識会計基準の下での工事進行基準の取扱い

■一定期間にわたり充足される履行義務と一時点で充足される履行義務
次の①から③のいずれかに該当する場合には、資産に対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し、一定期間にわたり収益を認識することが求められます(収益認識会計基準38項)。

① 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること(注)
(主にサービスの提供。例えば清掃サービス、輸送サービス、経理処理等の請負サービス等)
(注)仮に他の企業が顧客に対する残存履行義務を充足する場合に、企業が現在までに完了した作業を大幅にやり直す必要がないときは、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するものとします(収益認識適用指針9項)。
② 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じるまたは資産の価値が増加し、当該資産が生じるまたは当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること(例えば顧客が所有する土地で行われる建物建築工事契約)
③ 次の要件のいずれも満たすこと(例えばコンサルティングサービス、ソフトウェアの制作、建物建築工事)
(ⅰ)企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
(資産を別の用途に転用することができない場合とは、企業が履行するにつれて生じる資産又は価値が増加する資産を別の用途に容易に使用することが契約上制限されている場合、あるいは完成した資産を別の用途に容易に使用することが実務上制約されている場合)
(ⅱ)企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識します。進捗度を合理的に見積もることができる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識することになります。

■工事契約の場合
工事契約については、契約ごとに上記の各要件に該当するかどうかを検討することになります。いずれかに該当する場合は、工事進行基準を適用することになります。
まず先の①の要件については、企業の提供する建設資材や工事建設サービスの提供が未完成の建物の一部(仕掛品)として形成されていきますが、未完成の建物を顧客が消費することはできません。①の要件は満たさないと考えられます。
②の要件については、工事が進行するにつれて未完成の建物(仕掛品)が増大していきます。顧客が所有する土地で行われる建物建築工事契約の場合、一般的に、顧客は企業の履行から生じる仕掛品を支配するため、要件に該当すると考えられます。
③の(ⅰ)の要件については、資産を大幅に顧客仕様のものとする場合、顧客仕様の建物の仕掛品を、別の用途に転用して便益を受けることは困難である場合が多いと考えられます。
③の(ⅱ)の要件である「企業が現在までに履行を完了した部分の補償を受ける権利がある」かどうかが重要なポイントになります。この点については、契約条件および当該契約に関連する法律関係(法令や判例等)を考慮して判断することが考えられます。履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合とは、契約期間にわたり、企業が履行しなかったこと以外の理由で契約が解約される際に、少なくとも履行を完了した部分についての補償を受ける権利を有している場合です(収益認識適用指針11項)。その点、契約書上、顧客からの契約解除の場合の支払条件(補償の条項)を明確にしておくことが実務上望ましいと考えられます。

■進捗度の算出方法
一定期間わたり充足される履行義務であると判断される場合、進捗度に応じて収益を認識することになります。収益認識適用指針では、アウトプット法またはインプット法により、進捗度を合理的に見積もるものとされています。現行の実務では、工事進行基準を適用するときに進捗度の見積方法として原価比例法を用いるケースが多いと考えられます。収益認識会計基準の下でも、原価比例法はインプット法の指標として発生コストの比率を用いる方法であり、一定の合理性のある方法として認められるものと考えられます。