大株主への役員退職金|税務通信 READER'S CLUB

No.3655(令和3年5月24日号) 12頁

元国税審判官が厳選セレクト 実務家が知っておくべき「最新 未公表裁決」 第25回 「実質的オーナー」とされる元代表取締役に支払った退職慰労金の損金算入を認めた事例

Q1

 記事では、「実質的オーナーとしての言動とみなし役員としての言動とを区別し,後者について事業運営上の重要事項につき「具体的な」指示等を行っていたことを要求した点は実務上参考になる」とある通り、大株主であることを理由とした役員退職金の否認はないとしています。ただ、過去においては、大株主であることを理由に役員退職金の損金算入を認めなかった実務があったと記憶しています。何が原因で取り扱いが変わったのでしょうか?

A1

 過去には、大株主への(分掌変更)役員退職給与は、大株主であることを理由として否認されることがあったと聞いています。例えば、下記資料のように、課税庁側の資料において、オーナー株主については、分掌変更役員退職給与の取扱いを認めないことが明記されているものが見受けられます。

(6)役員の分掌変更等の退職給与(9-2-32)
(中略)
(留意点)
① 分掌変更後も実質経営者やオーナー株主の地位に留まる者については適用しない。
 (以下略)

(出典)「法人審理ガイドブック」(平成25年7月)大阪国税局法人課税課

 この取り扱いが変わった契機として、東京地裁平成20年6月27日判決が挙げられます。
 この東京地裁平成20年6月27日判決とは、会社の元代表取締役が、退任して監査役に就任し、その際に、退職給与を4,500万円損金算入して申告した事案です。
 これに対し、課税庁は、代表取締役退任後も同族会社の35%を所有する筆頭株主であることもあり、分掌変更通達(9-2-32)の(2)における除外に該当し、実質退職したとはいえない、と判断しました。
 それを受けた裁判所は、大株主である点はどうかについて、業務実態が完全になくなったのであれば、それがすべてだと判断しました。

 原告乙は原告会社において、役員としてはおろか、従業員としても一切の業務を行っていない状態になったのであって、仮に、原告乙が筆頭株主として原告会社に対して何らかの影響を与え得るとしても、それは、飽くまで株主の立場からその議決権等を通じて間接的に与え得るにすぎず、役員の立場に基づくものではないから、株式会社における株主と役員の責任、地位及び権限等の違いに照らすと、上記のような株式保有割合の状況は、原告乙が原告会社を実質的に退職したと同様の事情にあると認めることの妨げとはならないというべきである。

 つまり、大株主であることは、間接的な事情として斟酌する余地はあるけれど、これだけを理由にして否認することはできないと判断しました。「筆頭株主=経営上の主要な地位」となるとは限らないということです。

 この判決の結果、上記のそれまでの課税庁の執行が完全に矛盾することになりました。そこで、課税庁は取扱いを変更し、大株主であることのみをもって、分掌変更役員退職給与を認めないという取扱いを止めたものと推測できます。その後の裁判等(残波事件における国税不服審判税庁の主張など)で、大株主であることの論点が消えていることからも、この取扱いの変遷が感じ取れます。


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