個別労働紛争解決制度とは

今年の夏の訪れは早いですね。関東地方は6月に梅雨明けしてしまいました。仕事中は水分補給に気を付けましょう。ところで、皆さんは個別労働紛争という言葉をご存知でしょうか?労働者個人の方と会社が労働問題でトラブルとなった状態のことです(労働組合の場合は含みません)。この状態になった時に裁判外の方法により解決する制度...それが「個別労働紛争解決制度」です。相談件数も増加していますので、会社担当者の方は「万が一」に備えて基本的な仕組みを理解しておきましょう。

窓口と制度内容
img_onepoint_0068_01.jpg個別労働紛争解決制度は、各地区の「総合労働相談コーナー(全国の労働局や労働基準監督署に380ヶ所設置)」が窓口になっており、1)総合労働相談コーナーによる包括的な情報提供・相談、2)都道府県労働局長による助言・指導、3)紛争調整委員会によるあっせん、という3つの仕組みが用意されています。相談者は労働者個人からでも会社担当者からでも良く、平成29年度の相談件数は110万4,758件と10年連続で100万件超え、相談内容のトップは「いじめ・嫌がらせ」となっています。
労働相談のうち、労働基準法違反の疑いがあるものについては労働基準監督署や公共職業安定所等に取次がなされますが、民事上の個別労働紛争に該当するものについては、2)労働局長による助言・指導、あるいは3)のあっせん制度に移行します。2)または3)になるかは事案内容や相談者の希望にもよります。

あっせん制度とは
img_onepoint_0068_02.jpg3)紛争調整委員会によるあっせん制度とは、紛争調整委員会が労働局長の委任を受けて紛争当事者(労働者と会社)を呼んで開催するもので、紛争当事者との間に労働問題の専門家(あっせん委員である弁護士や特定社会保険労務士等)が入り、双方の主張の要点確認、必要な調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図ります。
制度利用は無料ですのであっせんを依頼する側(多くは労働者側)としては利用しやすい制度ですが、相手方(多くは会社側)に参加の義務(強制力)はありません。また、あっせん制度は「話し合いによる解決」ですので裁判のような勝ち負けではありません。あっせん委員が提案する解決内容に双方が歩み寄ることが求められています。
なお、あっせん開始と同時にあっせん開始通知書が発行され、双方の予定を調整してあっせん日が決められますが、あっせんの相手方には「弁論書(参加回答書)」と「不参加回答書」が送付され、期日までにいずれかの書面を提出することになります。参加の場合には参加回答書の提出となりますが、これは参加の意思表示というよりも「弁論」の意味が強く、あっせん委員があっせん日の前に目を通す大切な書面ですので、要点や主張を整理して記載しておくとよいでしょう。

あっせんのメリット
上記のように相手方には参加の義務はありませんので、あっせんが開始されても相手方が不参加であれば、あっせん打切りとなってしまいます。しかし、このあっせん制度には無料という他に2つの大きなメリットがあります。1つは非公開という点です。裁判ではたとえ勝ったとしても裁判内容がインターネットなどに残ってしまいますが、あっせんは非公開ですのでそれがありません。また、あっせんは1日で終わる制度ですので、迅速に解決することが可能です。
ちなみにあっせんを行えば必ず合意になるわけではありません。双方に歩み寄りがなかったり、隔たりが大きかったりすればまとまらないケースもあります。うまくまとまるようにするためにも「申請人は申請書に紛争概要と要望の内容」「相手方はそれに対する弁論の内容と解決案等」を分かりやすく記述しておくと、あっせん委員があっせん案をまとめる大きな手掛かりになります。
あっせんの場にはあっせん委員以外の弁護士や特定社会保険労務士に代理や補佐を依頼することも可能です。この場合は事前に紛争調整委員会に「代理人許可申請書」または「保佐人許可申請書」を提出し、その許可を受けておくことが必要です。