労働契約法の改正と通達

img_jitsumu_0003_02.JPG有期契約労働者の保護を図るため、平成24年8月10日および平成25年4月1日に改正労働契約法が施行されました。その概要は「労働契約法の改正(1)」に記載したとおりです。
改正労働契約法の解釈に関しては通達が出されているところ、同通達は、国会質疑における回答や、改正法の審議会で公益委員や事務局からなされた回答のうち、労使双方から特段の異議が出されなかったものを中心に記載されています。
その内容については、様々な問題や留意すべき点が含まれていますが、以下、専門家から特に疑義が出されている点について紹介します。

① 同一の使用者との間の契約期間の通算について
通達によれば、就業実態に変わりがないにもかかわらず、無期転換申込権の発生を免れる目的で、派遣形態や請負形態を偽装し、形式的に使用者を切り替えた場合は、たとえ使用者が変わっていても、「同一の使用者」との間の有期労働契約として、契約期間が通算されるとされています。
しかし、使用者が変わっており、それぞれ法人格が異なる以上、「同一の使用者」に該当しないことが原則であるにもかかわらず、なぜ、無期転換申込権を免れる目的を有するだけで、その原則から除外されるのかが不明であり、法律の解釈論としては飛躍しているとの批判がなされています。この点は、厚労省の方も、検討が足りていなかったと回答しているところです。

② 無期転換申込権の事前放棄について
通達によれば、無期転換申込権の事前放棄は、公序良俗(民法90条)に反するため無効とされています。
労働者が真意に基づいて事前放棄に同意しているような場合にまで、一律に公序良俗に反すると解釈することは妥当ではないとの批判がなされているところですが、基本的には、事前放棄の有効性には疑義が生じる可能性が高いものと考えておく方が良いでしょう。

③ 転換後の労働条件と就業規則
就業規則を変更して無期転換後の労働条件を下げる場合、その就業規則の効力は、労働契約法7条によって判断されるのか、それとも同法10条によって判断されるのかという議論があります。
同法7条は、新たに労働契約を締結する場面を規律するもので、同法10条は、現に適用されている就業規則を変更する場面を規律するもの(いわゆる就業規則の不利益変更)となっており、一般的には同法7条の方が就業規則の有効性を認められやすいと考えられています。
この点について厚労省は、いずれの条文によって判断されるべきであるかを明らかにしておらず、司法の判断に基づく裁判例の積み重ねにより明らかになっていくものとの見解を示しています。
無期転換申込権は、無期労働契約の申込みの意思表示であり、それに基づいて新たな労働契約が成立する以上、理論的には同法7条によって規律されるべき場面と考えられますが、まだ司法判断も出ていないため、使用者としては、変更後の就業規則の有効性に関して慎重に判断する必要があるでしょう。

img_jitsumu_0015_02.jpg④ 労働契約法20条の補充的効力
通達によれば、期間の定めを理由とする不合理な労働条件を禁止する労働契約法20条に違反した場合、不合理な労働条件は無効となるとともに、当該労働条件は、無期契約労働者と同じものになるとされています。これは、無効となった労働条件の内容を、同法20条に基づき、無期契約労働者と同じ内容で補充することを認めたものです。
労働基準法では、13条においてこのような補充的効力(直律効)が認められていますが、労働契約法には、そのような規定はありません。それにもかかわらず、なぜこのような補充的効力が認められるのか、補充的効力を法律で定めずに通達で定めることが認められるのか、ということについては批判のあるところです。

このように通達の内容には様々な疑義が出されているところですが、通達は、立法者意思(国会質疑の回答内容)や、改正法の審議において労使双方から特段の異議が出されなかった点を中心に記載されているため、裁判所が改正法を解釈するに際して通達を一定の参考にすることは予想されます。通達の内容にも十分注意を払っておく必要があるでしょう。

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