2019/07/23 10:08
先般、日産自動車の課長職について、経営上の重要事項の企画立案を行っており、出退勤の自由も認められ、年収も1,234万円以上で処遇されていたにもかかわらず、管理監督者性を否定する判決が下されました(横浜地判平31.3.26)。
管理監督者とは、①厳密な労働時間規制を行うに適さない管理監督業務に従事し、②労基法上の労働時間規制を及ぼす必要がないほどに出退勤の自由が認められ、③残業代請求権を認めなくとも十分な賃金水準で処遇を受けていることが要件になるものと考えられています。
労働者保護の観点からは、上記②と③が重要になるものであり、①はどちらかというと使用者側の事情といえます。
社会的な耳目を集めた、マクドナルドの店長について管理監督者性が争われた事案では、そもそも上記②や③について疑義があったため、労働者保護の趣旨に則っても管理監督者性が否定されることには相応の理由がなかったとは言えませんでしたが、日産自動車の上記事件では、課長職以上は社員全体の7%程度に過ぎず、かつ、上記②、③も十分に満たしており、①に関しても重要な会議における企画立案を担当していたため、管理監督者性の要件に欠けるところはないように思われます。それにもかかわらず、判決では、課長職では経営意思の決定に対する関与が間接的であるという理由で管理監督者性が否定されています。
仮にこの判決の理論に従えば、およそ部門のトップでなければ関与は間接的に過ぎないとして管理監督者性が否定されることになりかねず、結論の妥当性のみならず、理論的な妥当性にも大いに疑問が生じます。
判決は、世間で言われている上記①~③の要件について機械的な当てはめを行っていますが、上記①~③が、なぜ管理監督者の要件とされているのかという制度趣旨に立ち返り、より精緻な理論により管理監督者性を判断する必要があるでしょう。