みなし譲渡課税の通達(所得税基本通達59-6)とは|税務通信 No.3517

No.3517
(平成30年7月30日号)4頁

裁判例・裁決例 非上場株式のみなし譲渡課税巡り納税者が逆転勝訴

Q1

 みなし譲渡課税の通達(所得税基本通達59-6)とは、どのような趣旨で設けられている規定なのでしょうか。


A1

 みなし譲渡課税とは、所得税法59条第1項の規定に基づく課税のことです。

所得税法59条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)


 下線部にある通り、個人がその有する資産を法人に贈与若しくは著しく低い価額で譲渡した場合には、その事由が生じた時、つまり、贈与若しくは譲渡の時にその時における時価で譲渡があったものとみなされます。「みなす」ですので、あくまで実体経済ではそのような譲渡が生じていませんが、税法上はそのように扱う、ということです。
 所得税は、経済合理性のみを目的としない個人を対象とする税目です。そのため、所得税法では、通常取引すべき金額(時価)ではなく、現実に収入すべき(売却)代金をベースにする課税、つまり対価による課税を基本としています。
 その一方で、この規定は、その対価課税の例外と位置付けられています。

 また、税法上の「譲渡」とは、売買による資産の移転だけはなく、資産の所有権を移転する一切の行為をいいます。したがって、売買だけではなく、交換や贈与などの所有権を移転する行為のすべてが譲渡となるため、贈与による資産の移転もこの規定の対象とされています。

 この譲渡所得とは、資産の値上がり益に対して課税される所得です。また、その課税をするタイミングは、対象物が所有者の手元を離れる機会、つまり、所有権が移転した時です。そのため、法人へ資産が贈与された場合、その所有権が移転するタイミングでその資産の保有期間における値上がり益を精算するため、贈与時に時価で譲渡したものとみなしているのです。
 なお、法人への譲渡のうちこの規定の対象とされるのは、著しく低額での譲渡に限定されています。これは、著しく低い対価の譲渡であれば、それはもはや贈与と同様と言えるためです。

Q2

 では、なぜ個人から個人への資産の贈与については、所得税法59条が適用されないのですか。


A2

 本来、個人から個人への資産の贈与についても、法人への贈与と同様に、みなし譲渡の対象とすべきなのです。実際に、過去の税制では、個人への贈与もみなし譲渡の対象として、その保有期間における値上がり益に課税をしていました。
 しかし、受贈者側では贈与税の納税、贈与者側では譲渡所得の納税が生じるため、二重課税ではないかという批判が生じました。
 この課税は、本来、二重課税ではないのですが、そのような世論を抑えるため、みなし譲渡は行わず、贈与者の資産の取得費を受贈者に引き継ぐことにしました。つまり、贈与者の保有期間における資産の値上がり益に対する課税を贈与者側では行わず、受贈者がその資産を処分するときに行うことにしたのです。受贈者は、贈与者の取得価額と取得時期を強制的に引き継ぎ、その後の資産の処分時点で、贈与者のもとで発生していた値上がり益も含めて課税を受けることになるのです。このように、個人間の取引では、譲渡所得課税の繰り延べが行われているだけにすぎません。


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