第212回 形式上の貸倒れにおける「継続的な取引を行っていた債務者」とは

■形式上の貸倒れ
 貸倒損失の損金算入については、法人税基本通達9-6-1金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法律上の貸倒れ)、9-6-2回収不能の金銭債権の貸倒れ(事実上の貸倒れ)および9-6-3一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(形式上の貸倒れ)の取扱いを参考にすることになり、そのうちのいずれかに当てはまるものについて、損金算入を行うことになります。新型コロナウイルスの影響により廃業する法人が増えることが予想されますが、取引先が法的整理手続を行い、債権が法律上消滅するケースは全体からみれば少ないと思われます。
 法律上債権が生きている場合には、法人税基本通達9-6-2(事実上の貸倒れ)を検討する場面も生じますが、本通達は全額債権の回収見込みがないことが明らかな場合に認められる取扱いですので、要件が厳格です。一部でも回収可能性が残っている場合には基本的に認められない取扱いであるため、慎重に取り扱う必要があります。
 その点、法人税基本通達9-6-3(形式上の貸倒れ)は形式基準による取扱いであるため、否認リスクが少ないと考えられます。本通達の「取引を停止した時以後1年以上経過した場合」の起算日は、①債務者との取引を停止した時、②最後の弁済期、③最後の弁済の時、以上3つうちの最も遅い時である点に留意して、貸倒処理のタイミングを検討します。決算日時点で、上記の3つのうち最も遅い時から1年以上経過しているかどうかについて確認する必要があります。

■継続的な取引先とは
 法人税基本通達9-6-3における「取引の停止」とは、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうものとされています。
 「継続的な取引を行っていた債務者」とされていますが、継続的に取引を行う予定であったものの、結果的に1回限りの取引を行った後、取引が停止した場合についてどのように取り扱うかが論点になります。
 この点について、一度でも注文があった顧客について、継続・反復して販売することを期待してその顧客情報を管理している場合には、結果として実際の取引が1回限りであったとしても、その顧客を「継続的な取引を行っていた債務者」として、その1回の取引が行われた日から1年以上経過したときに本通達の取扱いを適用することができるという解釈がとり得るものと考えられます(国税庁質疑応答事例「通信販売により生じた売掛債権の貸倒れ」)。要は、継続・反復して販売することを期待してその顧客情報を管理している場合には、たとえ1回の取引で取引停止になったとしても、その取引先を「継続的な取引を行っていた債務者」に含めて取り扱って差し支えないという考え方です。

■備忘価額の趣旨
 本通達は、売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を損金経理したときはこれを認めるとされており、備忘価額(通常は1円)を残すことを求めています。その趣旨は何でしょうか。形式上の貸倒れであり、形式基準を満たしたものについて認める取扱いであるため、回収可能性がまったくないとは言い切れない場合も対象になり得ます。したがって、貸倒処理した後に万が一回収があったときに、回収額を益金算入する処理が正しく行われるように、備忘価額を残すことにより、取引先台帳からその債務者を抹消しないようにしておき、その後の回収があったときの経理処理が適切に行われるためのものであると考えられます。

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