2020/08/06 10:30
「寡夫控除」が廃止され「ひとり親控除」に改組されたそうですが、改正前の「寡夫控除」の対象者は全員「ひとり親控除」の適用を受けることができるのでしょうか。その他の変更点もあわせて教えてください。
改正前の「寡夫控除」の対象者は、基本的には「ひとり親控除」の適用を受けることができます。その他の変更点としては、未婚のひとり親も控除の対象になる点や、控除額が27万円から35万円に増額されることが挙げられます。
1. 対象者の性別と婚姻歴
廃止された「寡夫控除」と、創設された「ひとり親控除」について、要件の違いをまとめると、次のようになります。
寡夫控除 | ひとり親控除 | |
適用対象者の性別 | 男性のみ (女性は「寡婦控除」) |
性別は問わない |
過去の婚姻歴の有無 | 有る場合のみ適用 (妻と離婚・死別後に婚姻していない、妻が生死不明の場合に対象) |
婚姻歴は問わない (現に婚姻していない、配偶者が生死不明の場合に対象) |
寡夫控除は、妻と離婚・死別後に婚姻していない、又は、妻が生死不明の状況にあることが控除の適用を受けるための要件のひとつでした。つまり、過去に婚姻により「妻がいた」ことが要件であるため、婚姻によらずに父親になった場合(いわゆる「未婚のひとり親」)は、寡夫控除の適用を受けることができませんでした。
そこで、令和2年分の所得税から寡夫控除を廃止して、未婚のひとり親でも控除を受けことができる「ひとり親控除」が創設されました。寡夫控除の要件であった、①妻と離婚・死別後に婚姻していない、②妻が生死不明の状況にある、はいずれもひとり親控除の要件に当てはまるため、この点では、寡夫控除の対象者は全員、ひとり親控除の適用を受けることができるといえます。
2. 対象者の所得制限
寡夫控除とひとり親控除に関する所得制限については注意が必要です。
寡夫控除 | ひとり親控除 | |
納税者本人 | 500万円以下 (給与収入約688万円以下) |
500万円以下 (給与収入約677万円以下) |
扶養親族である子 | 38万円以下 (給与収入103万円以下) |
48万円以下 (給与収入103万円以下) |
ひとり親控除は、納税者本人の合計所得金額が500万円以下であることが要件とされています。この500万円という金額は寡夫控除も同じでしたが、令和2年分の所得税から給与所得控除額が引き下げられたため、納税者本人が給与所得者である場合には、収入金額ベースでは違いが出てくる点に注意が必要です。
なお、扶養親族である子の所得制限は、給与所得控除額の引下げも考慮した金額となっています。扶養親族である子が給与所得者である場合には、収入金額ベースでは違いはありません。
2. 控除額の増額
寡夫控除の控除額は27万円であったのに対して、ひとり親控除の控除額は35万円です。これは寡夫控除と同じ状況である女性が「寡婦控除」の適用を受ける場合の控除額が、改正前は35万円であったため、これに合わせるための増額です。これにより男女差がなくなりました。
本誌関連ページ
国税庁 ひとり親控除・寡婦控除に関するFAQを公表
No.3608(令和2年6月8日号)2頁