正社員と契約社員の労働条件の差

先月は、定年後再雇用の社員と正社員との間の労働条件の差に関する問題をテーマとして取り上げました。取り上げた裁判例では、定年前後で業務内容、人材活用の仕組みにほとんど変更がないにもかかわらず、労働条件のみが切り下げられることが違法とされました。定年後再雇用という、ある意味で社会政策的に企業に義務付けられた制度を、どのように理解するかという問題意識とも密接に関わるテーマであったといえます。

img_jitsumu_0057.jpg一方、定年後再雇用ではなく、正社員と契約社員一般の労働条件の差が問題となった事例も存在します。定年後再雇用であっても、契約社員一般であっても、いずれも争点となる条文は、労働契約法20条(期間の定めの有無による不合理な労働条件の差異の禁止)ですが、契約社員一般に関しては、「定年後である」という考慮要素がないため、問題状況は異なると考えられます。

そして、先月出された高裁判決では、業務内容に大きな差はないものの、転勤の有無等といった人材活用の仕組みが異なる正社員と契約社員の労働条件の差について、その一部が違法無効とされました。定年後再雇用の事案では、定年前後で業務内容と人材活用の仕組みにほとんど差がなかったため、労働条件の差が違法とされましたが、上記高裁判決では、人材活用の仕組みが異なっていたものの、なお、一部の労働条件の差異について違法とされました。したがって、実務に及ぼす影響も大きいものと考えられます。

同高裁判決で違法とされた労働条件の差は、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当となります。一方、手当の中でも、住宅手当、皆勤手当の差は適法とされています。具体的に、どのような手当の差、労働条件の差が不合理と評価されるのかは、個別具体的な事案に応じて検討すべきであるため、明確な判断基準は示し難い面があります。しかし、基本的には、その手当が支給されている趣旨を検討し、その趣旨に照らして、正社員と契約社員との業務内容や人材活用の仕組みの違いから、支給に差を設けることについて合理性を説明できるかを検討することになるものと考えられます。

同種の紛争はこの他にもあり、今後判決で判断が示される見通しであるため、予断を許さない状況にあり、実務の動向を注視していく必要があるでしょう。

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