更新上限条項について

 有期雇用労働者について無期転換ルールが導入されたことに対する会社の対応として、5年の更新上限を新設するとともに、有能な人材は別途登用制度により限定正社員(総合職とは異なる職務・地域限定の無期雇用労働者等)等として採用するという制度設計をしている例は多々見受けられます。

 その制度設計のあり方の是非は会社によって様々ですので一概に論じることはできませんが、新規採用者に対してそのような制度を適用するのと異なり、すでに有期雇用契約を反復継続して更新している者に対してそのような制度を一方的に適用することに関しては一定の法的リスクが伴うものと考えられています。

 報道でも報じられた博報堂事件(福岡地判令2・3・17)は、そのような法的リスクが顕在化した例といえます。
 同事件では、1年の有期雇用契約を29回にわたり更新していた者が、途中から契約書に記載されることとなった5年更新上限の条項に基づき雇止めになったという事案について、まずは、最後の契約書に記載された不更新条項に基づき契約終了の合意が成立したとの会社の主張が排斥され、さらに雇止めの合理性についても次のとおり判示され効力が否定されました。

 「(1) 被告は、九州支社が長年赤字状態にあり、人件費の削減を行う必要性があったこと、九州支社には計画管理部の他に原告が従事できる業務は存在しないこと、原告の担当していた業務が人員を1名必要とするほどのものではなく外注によってもまかなえるものであったことなどを主張するとともに、原告に対する評価は、期待水準通りといったものであるばかりか、コミュニケーション能力に問題があることが繰り返し指摘されており、原告のコミュニケーション不足が原因でグループ会社の担当者からクレームが来たこともあったことなどを指摘する。
 (2) ところで、被告の主張するところを端的にいえば、最長5年ルールを原則とし、これと認めた人材のみ5年を超えて登用する制度を構築し、その登用に至らなかった原告に対し、最長5年ルールを適用して、雇止めをしようとするものであるが、そのためには、前記3で述べたような原告の契約更新に対する期待を前提にしてもなお雇止めを合理的であると認めるに足りる客観的な理由が必要であるというべきである。
 この点、被告の主張する人件費の削減や業務効率の見直しの必要性というおよそ一般的な理由では本件雇止めの合理性を肯定するには不十分であると言わざるを得ない。また、原告のコミュニケーション能力の問題については、上記(1)に述べるような指摘があることを踏まえても、雇用を継続することが困難であるほどの重大なものとまでは認め難い。むしろ、原告を新卒採用し、長期間にわたって雇用を継続しながら、その間、被告が、原告に対して、その主張する様な問題点を指摘し、適切な指導教育を行ったともいえないから、上記の問題を殊更に重視することはできないのである。そして、他に、本件雇止めを是認すべき客観的・合理的な理由は見出せない。
 なお、被告は、転職支援サービスへの登録をしたり、転職のためパソコンのスキルを上げようとしていたにもかかわらず、雇用継続を要求することは信義則上許されないとも主張するが、前記2(1)で検討したとおり、雇用継続を希望しつつも、雇止めになる不安からそのような行動に出ることは十分あり得ることであって、信義に反するものということはできない。」

 そもそも会社としては5年更新上限ルールに基づいて雇止めしているので、裁判所がこれに基づく機械的な雇止めを認めず、通常の雇止めと同じように有効性を検討することとした時点で、会社としては整理解雇や能力不足解雇(解雇ではなく雇止めであるが)のような主張をしても苦しかったといえるでしょう。

 同事件は1年契約が29回にもわたって更新されてきた事案ですので、更新回数が少ない事案でも同様の判断になるとは限らず、また、更新上限条項を新設したことによって、雇止めのハードルが若干ではあっても下がる可能性も事案によっては否定できないものと考えられます。

 したがって、事例判断ということにはなりますが、各企業としては、このような裁判例があることも十分に認識した上で制度設計・運用について検討する必要があるでしょう。

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