第153回 マイナンバー制度導入に係る費用の取扱い ~システム対応のための費用は?~

今月のキーワード ―2015年9月―
公認会計士 太田達也


■マイナンバー制度に対応するための費用


平成28年1月以降に、マイナンバー制度が実施されます。マイナンバーを管理するために、システム整備等の対応を検討している企業も多いと思われます。給与計算ソフトの年末調整システムにマイナンバーを紐付けるためのプログラムの更新、源泉徴収票や支払調書の作成ソフトにマイナンバーを記載するプログラムの更新等、ソフトウェアの改訂を行うことが考えられます。


■修繕費と資本的支出の違い


固定資産を使用していく上で、固定資産の原状の効用、原状の価値を維持するために必要な費用は修繕費とされます。一方、固定資産に対して新たな機能の追加や機能の強化を図るための費用は資本的支出とされ、資産計上する必要があります。先に説明したようなマイナンバー制度に対応するためのプログラムの更新費用については、どのように考えたらよいのかが問題となります。


■法律改正等に伴い、不可避的に発生する必要の取扱い


消費税率が5%から8%に引き上げられる時に、会計ソフトなどのプログラムを8%に対応する内容に更新したことは記憶に新しいところです。また、それ以前にも、減価償却限度額の算定方法に係る税制改正に伴い、減価償却計算システムを更新しました。

このように法律の改正等に伴い、その固定資産(この場合はソフトウェア)の原状の効用(価値)を維持する上で必要な費用、言い換えるとこれまでどおりに使用し続けていく上で必要な費用は、原則として修繕費に該当します。今回のマイナンバー制度に対応するためのプログラムの更新のための費用についても、同様に取り扱われるものと考えられます。


■新たな資産の取得は要注意


マイナンバー制度に対応するために、新たにパソコンやサーバーを購入することもあり得ます。この場合は、新たな資産(器具備品)の取得に該当しますので、資産計上することになります。ただし、取得価額が10万円未満であれば損金経理による損金算入、10万円以上20万円未満であれば一括償却資産として取り扱うことができます。また、中小企業者等であれば、取得価額30万円未満であれば(1事業年度当たり300万円を超えない範囲で)損金経理による損金算入が認められます。

また、情報セキュリティの強化対策のために、暗号化ソフトを導入する場合も、新たな資産(ソフトウェア)の取得に該当し、原則として資産計上することになります。(それが少額減価償却資産または一括償却資産に該当する場合は、先ほどと同様です)
なお、修繕費として損金算入できるものと資産計上が必要なものが両方発生することもあり得ますから、業者からの請求書に内訳をきちんと記載してもらう対応が必要になります。

  • PRESSLINKS230921

  • 通信DB インボイス制度関連記事特集

  • 官公庁公表資料リンク集

  • 税務通信テキスト講座

  • 図解でわかる!インボイス制度(11/30まで掲載)

  • 税務通信電子版(アプリ)

  • 経営財務電子版(アプリ)

  • まんが

  • ついった

  • メールマガジン