第165回 適格合併により引き継がれた減価償却資産に係る償却方法 ~償却の方法、耐用年数の取扱い等~

今月のキーワード ―2016年9月―
公認会計士 太田達也


■合併による資産の移転

適格合併により資産の移転が行われた場合、合併法人は被合併法人の合併直前の帳簿価額によりその資産を引き継ぎます。一方、非適格合併の場合は、被合併法人が合併時の時価により譲渡したものとして被合併法人の最後事業年度(合併の日の前日の属する事業年度)において譲渡損益を認識し、合併法人は時価で受け入れることになります。適格合併の場合は、移転資産に対する支配が合併の前後を通じて継続しているという見方をし、簿価引継ぎという処理を定めていると考えられます。


■合併法人における実務対応

適格合併により合併法人が移転を受けた資産の取得価額は、①被合併法人の取得価額と②合併法人が事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とされています(法令54条1項5号)。取得価額については、被合併法人の取得価額(原始取得価額)を引き継ぐという考え方が適用されます。

また、同様に、合併法人における取得の日も、被合併法人の取得の日(原始取得日)を引き継ぎます。定額法または旧定額法を適用する場合には、その計算の基礎となる取得価額については、原則として、被合併法人の取得価額(原始取得価額)を用いて計算する必要があります。一方、定率法または旧定率法を適用する場合には、被合併法人における合併直前の帳簿価額に償却率を乗じて計算することになります。

注意しなければならないのは、償却の方法です。償却の方法については、引継ぎという考え方はありません。あくまでも合併法人の現に採用している償却の方法を適用することになります。

■被合併法人の償却の方法を適用できる例外あり

合併により移転を受けた減価償却資産について、被合併法人の適用していた償却の方法を合併法人が合併後において適用できる例外があります。次のいずれかのケースに該当し、かつ、「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出した場合です。

①すでに償却方法を選定している資産以外の資産を合併により取得した場合
②合併により新たに事業所を設けたと解し得る場合

この場合の届出書の提出期限は、合併事業年度の確定申告書の提出期限です。

■合併法人において適用すべき耐用年数

合併法人が合併により引き継いだ減価償却資産に適用する耐用年数は、原則として、法定耐用年数です。ただし、中古資産の耐用年数を適用することが例外的に認められています(耐令3条1項)。

ここで注意しなければならない点は、中古資産の耐用年数を適用する場合は、定額法または旧定額法で計算するときは、その計算の基礎となる取得価額については、被合併法人の取得価額(原始取得価額)を用いないで、被合併法人における合併直前の帳簿価額を用いる必要があるという点です。法定耐用年数を使用する場合に、被合併法人の取得価額(原始取得価額)を用いるのと異なる取扱いになる点に留意が必要です。
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