短期前払費用通達の適用対象範囲|税務通信 READER'S CLUB

No.3663(令和3年7月19日号) 6頁

税務の動向 短期前払費用の特例に係る適用上の留意点①

Q1

 記事にある、短期前払費用の特例(法基通2-2-14)の対象となる「前払費用」とは、そもそも、どのようなものが該当するのでしょうか。

A1

 同通達は、法人税法における債務確定主義の例外として規定されている取扱いであり、公正妥当な会計基準における重要性の原則の範囲内において例外的に認められているものです。
 そのため、まずは会計処理において費用処理が可能かどうかを検討する必要はありますが、ここでは、前払費用の定義の考え方を整理してみます。

 企業会計において、前払費用とは、「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合において、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価で、時間の経過とともに時期以降の費用となるもの」をいうこととされています。
 また、法人税法においても同様に規定されており、前払費用に該当する要件を整理すると次のようになると考えられます。

① 一定の契約に従って継続的に役務提供を受けること。すなわち、等質等量のサービスがその契約期間中継続的に提供されること。
② 役務の提供の対価であること。
③ 翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること。
④ 現実にその対価として支払ったものであること。

 これらの要件を踏まえると、一般的には、賃借料、借入金利子、信用保証料、保険料等の費用については、前払費用に該当するものと考えられますが、一定の時期に特定のサービスの提供を受けるためにあらかじめ支払った対価(テレビCM放映料や前払給料)、又は、物の購入や生産に対する対価の前払い分については、「前払金」であって「前払費用」ではないと考えられることから、当該通達は適用されないものとして取り扱われています。

Q2

 実務的には、雑誌の年間購読料等について短期前払費用の対象として費用処理したまま税務否認を受けていないケースもありますが、なぜでしょうか。

A2

 雑誌等の定期購読料については、一定の契約に基づいて継続的に物品を購入するための対価の前払であって、役務提供の対価ではないと考えられることから、基本的には短期前払費用通達の取扱いは適用されないと考えられます。
 しかしながら、実務的には雑誌の年間購読料等について短期前払費用の対象として費用処理したまま税務否認を受けていないケースもあると思われます。
 これは、金額的に大きな影響がないため否認がされていないことが理由だと思います。仮に、他の理由があるとすると、既に廃止された法人税個別通達「期間損益通達(S55に廃止された旧通達)を適用して行う会計処理に対する公認会計士の監査上の取扱いについて(昭43直法1-237)」において、前払費用として処理しないことができる具体的な個別項目として、「前払の雑誌購読料、諸会費およびこれらに類する項目については、前払費用として処理しないことができる」とされていたことによるものではないかと推察します。


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