2018/09/10 9:00
消費税の納税義務がある法人で、記事と同様に課税売上がゼロの課税期間であれば、仕入税額控除の計算に関しては、常に個別対応方式若しくは一括比例配分方式を採用することになるのでしょうか。
消費税の仕入税額控除は、消費税法30条に規定されています。
この第30条第1項では、課税仕入れに係る消費税額は全額控除されることが規定されており、次の第2項では、第1項の例外として、課税仕入れに係る消費税額を個別対応方式若しくは一括比例配分方式で計算することが規定されています。
第30条(仕入れに係る消費税額の控除) 1 事業者( 略 )が、国内において行う課税仕入れ( 略 )若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる課税標準額に対する消費税額( 略 )から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額( 略 )、当該課税期間中に国内において行った特定課税仕入れに係る消費税額( 略 )及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物( 略 )につき課された又は課されるべき消費税額( 略 )の合計額を控除する。 2 前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が五億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が百分の九十五に満たないときは、同項の規定により控除する課税仕入れに係る消費税額、特定課税仕入れに係る消費税額及び同項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額( 略 )の合計額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする。 一 (いわゆる個別対応方式) 二 (いわゆる一括比例配分方式) |
課税仕入れに係る消費税額 → 原則: | 全額を仕入税額控除(第1項) |
→ 例外: | 個別対応方式若しくは一括比例配分方式で 計算した金額を仕入税額控除(第2項) |
また、課税期間の課税売上高が5億円を超えるとき、又は、課税期間の課税売上割合が95%に満たないとき、に限り、例外が適用されます。
ここで、課税売上割合がゼロ円の場合について、事例で検討してみます。
事例1 課税売上(免税売上含む)がゼロ円であり、預金利息として非課税売上が10円発生していた課税期間の仕入税額控除 |
課税売上割合は、となることから、0.0000という数値になります。つまり、課税売上割合という数値が存在し、その数値が95%未満であることから、仕入税額控除は個別対応方式若しくは一括比例配分方式により計算されます。
事例2 課税売上(免税売上含む)がゼロ円であり、非課税売上も0円であった課税期間の仕入税額控除 |
課税売上割合は、となることから、数値が計算されません。つまり、課税売上割合という数値が存在しないことから、課税売上割合が95%未満という要件にも該当しません。したがって、消費税法第30条第1項の原則が適用され、全額の仕入税額控除が可能となります。
(以下、2021.11.29追記)
なお、令和3年11月26日付で更新された消費税の質疑応答事例では、以下のとおり、課税売上割合は95%未満として取り扱われることが明記されております。分離解釈上では疑義が残りますが、実務としては、こちらの取り扱いになりそうです。
「課税期間中の売上(資産の譲渡等)がなく、課税売上割合の計算上の分母及び分子がともに0となる場合、課税売上割合は0%(95%未満)として取り扱われます。したがって、当課税期間中の課税仕入れに係る仕入控除税額の計算は、消費税法第30条第2項の規定が適用され、個別対応方式又は一括比例配分方式により行うことになります。」
本誌関連ページ
ショウ・ウィンドウ 課税売上がない課税期間の仕入税額控除
No.3522(平成30年9月10日号)47頁