定期昇給と労使慣行

  賞与や定期昇給に関しては、規定上実施することが会社に義務付けられていないとしても、長年にわたり実施されている場合には、そのような運用について労使慣行が成立しているものとして、特段の事情がない限り、会社に実施する義務が課せられることがあります。

 そのような例として、学校法人明泉学園事件(東京地裁令和元年12月12日判決)があります。
同事件では、昭和54年から平成10年までの期間、毎年、参与に就任した者、退職後に再雇用された者、55歳又は58歳に達した者及び病気や産休等により長期間欠勤し又は休職した者を除き、常勤講師につき1号俸ずつ定期昇給が実施されていました。
判決では、遅くとも平成10年時点では同定期昇給の扱いについて労使慣行が成立していたものと認定されました。

 平成11年以降は定期昇給が行われていなかったものと思われますが、そのような長期間にわたり労使慣行が事実上破棄されていたという事情をもってしても、判決では、「その後にその拘束力が失われたことをうかがわせるに足りる証拠もないから、同慣行は平成29年度まで引き続き法的拘束力を有するものとして存在していたというべき」と認定されています。

 使用者としては、長年続いている運用を廃止する場合、単に事実上廃止するのみでは上記事例のとおり労使慣行の成立を否定できない可能性があることに注意する必要があるでしょう。

 労使慣行化していることが疑われるような場合、それを廃止するのであれば、就業規則の不利益変更に準じて、変更の必要性・合理性を検討し、さらに労働者に対する説明等の手続き的適正にも十分に配慮する必要があるものと考えられます。

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