第178回 名義株の処理方法 ~税務上の取扱いとの関係・問題点~

今月のキーワード ―2017年10月―
公認会計士 太田達也

■名義株とは
名義株とは、他人の名義を借りて、株式の引受けおよび払込みがされた株式をいいます。平成2年の商法改正前は、株式会社を設立するに際しての発起人の数は7人以上でなければならないと定められていました。そのため、創業者だけでは足りず、実際の払込みは創業者が行うにもかかわらず、名前だけを借りて対応するケースが少なからずみられました。この名義株が現在でも残っている会社は少なくありません。

■実質所有者課税の原則
名義株が誰に帰属しているかですが、税務上は、実質所有者課税の原則により、実質的な所有者に帰属するものとされています。創業者の相続の時に、その名義株の実質的な帰属が創業者であると判断されるときは、創業者の相続財産として課税対象になります。また、同族会社の判定においても、実際の権利者が所有するものとして判定することになります。

さらに、法人税法上、支配関係があるかどうかまたは完全支配関係があるかどうかの判定において、一義的にはその法人の株主名簿、社員名簿または定款に記載されている株主によって判定しますが、その株主が単なる名義人であって、その株主以外の者が実際の権利者である場合には、その実際の権利者が保有するものとして判定します(法基通1-3の2-1)。

■名義株への対処法
名義株が存在したままですと、実際の権利者と株主名簿上の株主とが一致せず、先の相続の時の取扱い1つとっても、実務の混乱の原因となります。名義を借りた時に、実際には出資をしていない旨の承諾書等があれば、トラブルは基本的には生じないと考えられますが、そのような書類が残っていない場合には、名義人が株式の買取請求、配当の受取等の権利の主張をしてくるおそれもあります。

そこで、名義人が生きている間に、実際には出資していない旨(名義株であること)の承諾書等を提示したうえで、真の株主に名義を書き換える対応が考えられます。そのような承諾書等が残っていない場合には、真の株主ではない旨の確認書を先方から徴したうえで、株主名簿の名義を真の株主に書き換えておく対応が望ましいと考えられます。その場合には、真の所有者が出資したことを証する資料(通帳、銀行の入出金明細等)があれば、帰属関係の証明が行いやすいと思われます。当事者が生きている間に、株主名簿を書き換えておくことが重要なポイントであると思われます。

なお、中小企業においては、そもそも株主名簿を作成していないケースも一部あるようですが、名義株がある場合には、実際の権利者を株主として記載した株主名簿を作成しておくべきであると考えられます。