令和元年版労働経済白書

img_onepoint_0081_01.jpg季節は衣替えの時期となりましたが、日中はまだまだ暑い日があります。朝晩の寒暖差が厳しくなりますので、体調管理にはくれぐれもお気を付けください。さて、9月27日に厚生労働省から「令和元年版労働経済の分析(以下、「労働経済白書」)」が公表されました。労働経済の状況を把握しておくことは会社担当者として大きなプラスになるはずですので、今回はその内容をご紹介させていただきます。

労働経済白書とは
労働経済白書とは、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書のことです。雇用情勢の概要や新入社員の定着率、従業員の働きがいや働きやすさなどが取り上げられていますので、この内容を把握しておくことで会社の今後の採用や、日々の労務管理、そして離職率の低下などにも役立てることができます。

人手不足と取り組み内容
今回の特徴として人手不足感が高まっているということが取り上げられています。2018年度の完全失業率は2.4%と1992年度以来26年ぶりの低水準、有効求人倍率は1.62倍と1973年以来45年ぶりの高水準となっており、企業規模別では大企業よりも中堅、中小企業の方が不足感を感じている結果となっています。これに対する企業の取り組み策として、まず外部調達(新規採用)では「求人募集時の賃金引上げ」だけではなく「賃金以外の労働条件の改善」や「応募条件の緩和」、さらに「出産・育児等による離職者の呼び戻し・優先採用」などが数字として挙がってきています。

次に内部調達(現有社員)では「定年延長や再雇用による継続雇用」がトップ、「非正規から正規への転換」「配置転換」と続いています。注目としては「業務の見直し」というジャンルで「離職率を低下させるための雇用環境の改善」「従業員への働きがいの付与」の項目が赤枠で表示されていることで、厚労省としてはこの部分に注目していることがうかがわれます。

「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現
上の内容に関連付けられて「働きがい」を持つためには「働きやすい環境を整備すること」が必要であるという組み立てになっているようです。データも「働きがいと従業員の離職率」や「働きがいと労働生産性」といったものが数値化されており、「働きがいの向上により、職場定着率や離職率に加え、従業員のストレスや労働生産性が改善する可能性がある」と書かれています。

また、正社員における「働きがいの概況」ではデータとして、働きがいについて年代別で60歳代以上が最も高く感じており、50歳代、40歳代、と年齢が若くなるほど働きがいが低く、役職別では部長相当職以上が最も高く、役職なしが一番低い結果となっていることが示されています

働きがいの高い企業の取り組み
では、具体的にどのようにすれば「働きがい」は向上・改善するのでしょうか。

従業員の働きがいが高い企業の取り組みの雇用管理では、「職場コミュニケーション」や「労働時間の短縮」「業務遂行に伴う裁量権の拡大」等が挙げられており、人材育成面では「指導役や教育係の配置」「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」などとなっています。

また、具体的な企業の取り組みとして、「月1回以上、上司と部下の対話」によって離職率が大幅に低下した例や、「テレワークの推進」でコスト削減とプライベート時間が確保できた例、「トップダウン型から管理職への権限の委譲」「ワークショップ実施による新規事業の採用」等による裁量拡大の例、なども労働経済白書のコラム欄に掲載されています。

今後の流れ
img_onepoint_0080_02.jpg世間では「働き方改革」が始動していますが、これがスタートした理由は人口減少による労働力不足を補わなくてはならないという観点もあります。今回の労働経済白書も「人手不足」が大きく取り上げられているのはもちろんですが、これに対する解決策として「働きがい」という言葉が多用されています。今後は「働き方改革実現」のための「働きがいの取り組み」が企業に求められる時代になるのではないでしょうか。

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